[認定P-17] COVID-19肺炎入院後廃用による嚥下障害患者に対し経口摂取支援を行った症例
【緒言】
近年COVID-19が急速に拡大しており入院後廃用に伴い嚥下障害が表面化することも多い。高齢者の場合その他の既往にも配慮して支援を行う必要がある。COVID-19肺炎入院後廃用による嚥下障害患者に経口摂取支援を行ったので報告する。
【症例】
80歳男性。患者家族からお楽しみ程度の経口摂取希望があり訪問診療を開始した。既往歴はパーキンソン病,糖尿病,COVID-19肺炎であった。ほぼ寝たきり状態,車椅子移乗は可,栄養は胃瘻から摂っていた。体重56.4kg。開眼しないが食事時は声掛けに反応がみられた。本報告にあたり患者家族に書面で同意を得た。
【経過】
初診時,介助で煮豆数口の経口摂取は可能であった。咽頭残留あるが交互嚥下で除去できた。家族の希望でとろみ無しの水分を検査し,誤嚥あるが自己喀出可能であった。自宅ではお楽しみを重視し,食形態は厳格に制限せず一口量とペースの指導を行った。週3日のデイサービス先でも直接訓練を実施できるよう調整した。施設では安全性を重視し,姿勢と覚醒状態の見極めを指導しペースト食から訓練を行った。その後,検査結果に基づいて施設での食事は粥,1-2cm角刻みまで上げた。同年9月まで順調だったが(Alb 3.4,体重61kg),11月上旬,全身の湿疹と易疲労性,覚醒不良を認め,咽頭残留多量で嚥下後誤嚥あり,自己喀出不可であった。同月中旬に胸水貯留疑いで検査入院,肺を含め異常なく,Alb 3.4,体重69kgで下旬に退院となった。経口摂取はペーストやゼリーに限定し,併行してバルーン訓練(3ccを5回)を週1回実施したところ咽頭残留および嚥下後誤嚥はなくなり,機能改善を認めた。
【考察】
COVID-19肺炎の既往に対し特異的な訓練は必要なく,段階的摂食訓練で対応可能であった。パーキンソン病による覚醒不良は嚥下機能に影響が出るため,その見極めや状態に合わせた介助法を家族や介護者と共有したことが誤嚥性肺炎の防止や食形態変更に繋がったと考えられる。疲労に伴う嚥下機能低下の際は食形態調整だけでは対応できずバルーン訓練を選択した。バルーン訓練は受動的な訓練であり,訓練に慣れた実施者が手早く行うことで患者への負担を軽減し成果を挙げられたと言える。嚥下後誤嚥がなくなってむせが減り,むせる分の体力消耗が軽減し摂食嚥下に有利に働いたと思われる。
(COI開示:なし 倫理審査対象外)
近年COVID-19が急速に拡大しており入院後廃用に伴い嚥下障害が表面化することも多い。高齢者の場合その他の既往にも配慮して支援を行う必要がある。COVID-19肺炎入院後廃用による嚥下障害患者に経口摂取支援を行ったので報告する。
【症例】
80歳男性。患者家族からお楽しみ程度の経口摂取希望があり訪問診療を開始した。既往歴はパーキンソン病,糖尿病,COVID-19肺炎であった。ほぼ寝たきり状態,車椅子移乗は可,栄養は胃瘻から摂っていた。体重56.4kg。開眼しないが食事時は声掛けに反応がみられた。本報告にあたり患者家族に書面で同意を得た。
【経過】
初診時,介助で煮豆数口の経口摂取は可能であった。咽頭残留あるが交互嚥下で除去できた。家族の希望でとろみ無しの水分を検査し,誤嚥あるが自己喀出可能であった。自宅ではお楽しみを重視し,食形態は厳格に制限せず一口量とペースの指導を行った。週3日のデイサービス先でも直接訓練を実施できるよう調整した。施設では安全性を重視し,姿勢と覚醒状態の見極めを指導しペースト食から訓練を行った。その後,検査結果に基づいて施設での食事は粥,1-2cm角刻みまで上げた。同年9月まで順調だったが(Alb 3.4,体重61kg),11月上旬,全身の湿疹と易疲労性,覚醒不良を認め,咽頭残留多量で嚥下後誤嚥あり,自己喀出不可であった。同月中旬に胸水貯留疑いで検査入院,肺を含め異常なく,Alb 3.4,体重69kgで下旬に退院となった。経口摂取はペーストやゼリーに限定し,併行してバルーン訓練(3ccを5回)を週1回実施したところ咽頭残留および嚥下後誤嚥はなくなり,機能改善を認めた。
【考察】
COVID-19肺炎の既往に対し特異的な訓練は必要なく,段階的摂食訓練で対応可能であった。パーキンソン病による覚醒不良は嚥下機能に影響が出るため,その見極めや状態に合わせた介助法を家族や介護者と共有したことが誤嚥性肺炎の防止や食形態変更に繋がったと考えられる。疲労に伴う嚥下機能低下の際は食形態調整だけでは対応できずバルーン訓練を選択した。バルーン訓練は受動的な訓練であり,訓練に慣れた実施者が手早く行うことで患者への負担を軽減し成果を挙げられたと言える。嚥下後誤嚥がなくなってむせが減り,むせる分の体力消耗が軽減し摂食嚥下に有利に働いたと思われる。
(COI開示:なし 倫理審査対象外)