The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

認定医審査ポスター

認定医審査ポスター » 認定医審査ポスター3

認定医審査ポスター3

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター3 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-18] 扁桃癌放射線治療後の摂食嚥下障害

○森豊 理英子、中根 綾子 (東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言】
放射線治療の副作用により重度開口障害を認め,それに伴い口腔内清掃状態が劣悪であった患者に対し,口腔衛生管理から開始し,摂食嚥下リハビリテーションを段階的かつ多角的に実施した。外来通院と訪問診療を併用し, 妻と二人暮らしの自宅設備に合わせ、直接訓練の環境作りを工夫した一例を経験したので報告する。
【症例】
86歳男性,左側扁桃癌放射線治療(20XX年)後,「食べる練習をしたい,話せるようになりたい」を主訴に20XX+5年7月当科外来受診。その他既往は甲状腺乳頭癌,胃瘻による3食経管栄養,栄養状態はBMI21.1,血液データはCRP2.32mg/dl。開口量は7mm,齲歯多数あり,プラーク付着,歯肉腫脹,全体に乾燥・痂皮・痰の貯留著明で悪臭が強い。嚥下内視鏡・造影検査では鼻咽腔閉鎖不全,舌の巧緻性低下による送り込み不全,舌骨の挙上・咽頭収縮の減弱,水分の誤嚥を認める。発音不明瞭,湿性嗄声あり。口腔清掃方法と開口器による開口訓練を指導し,口腔衛生管理で週に1回外来通院を開始した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
初診から3週間後,開口量15mmとなり, 同年8月PAP(舌接触補助床)を装着, 装着時の舌圧は5.8kPaであった。 9月,CRP1.04 mg/dlに改善。嚥下造影検査の再評価を行い,中間のとろみ水を2ml, 姿勢はリクライニング60度・頸部回旋, 代償法として追加嚥下を加え直接訓練を設定し, 訪問診療で直接訓練とシャキア法、空嚥下、口腔周囲筋のストレッチ等の間接訓練を指導した。また,病院の言語聴覚士に構音訓練を依頼。直接訓練開始当初は3口程度であったが,20XX+6年1月時点で,舌圧8.3kPaに改善し,舌による送り込みも改善され,20口を確実に嚥下できるようになった。
【考察】
口腔内の状態や痰の貯留, CRP上昇より, 軽微な日常的誤嚥の存在が疑われた。口腔内清掃状態が改善し, CRPが低下したことは, 誤嚥性肺炎のリスク軽減を反映していると考える。嚥下内視鏡画像や開口量,舌圧等の数値を毎回説明することで,患者本人と妻の訓練へのモチベーションを維持した。直接訓練の内容について,訪問診療を併用し,実際自宅で妻とどのように再現できるかを具体的に設定し指導したことで,妻との直接訓練の効果を高めることができた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)