The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

認定医審査ポスター

認定医審査ポスター » 認定医審査ポスター6

認定医審査ポスター6

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター6 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-32] 脳血管障害患者の習慣性両側性顎関節脱臼に対する咬合再建によって改善した症例

○高田 正典、江面 晃 (日本歯科大学 在宅ケア新潟クリニック)

【目的】
 高齢者の顎関節脱臼は比較的多く遭遇する。さらに脳血管障害や精神疾患,パーキンソン病,認知症患者に対する治療は困難を極める。今回,脳血管障害患者に口腔環境整備,上下顎義歯作製によって脱臼防止に繋がった一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 69歳,男性。2018年5月に習慣性両側顎関節脱臼を主訴に来院した。既往歴は脳梗塞, その後再発を繰り返している。現病歴は2018年4月から顎関節脱臼を発症。その後, 当院を受診するまで頻回な脱臼を繰り返していた。脳梗塞発症以降,歯科治療歴はない。現症は身長164cm,体重 50kg, BMI:18.59。口腔内所見は,残存歯に僻蝕や動揺もあり,上下左右の臼歯部欠損と咬合異常を呈していた。口腔衛生環境は不良。パノラマX線所見では顎関節部の器質的変化は乏しく,咬合高径の低下を認めた。
【結果と考察】
 初期対応は顎外固定にて顎関節脱臼の予防に着手。しかしながら,再脱臼のため,外科的治療もしくは保存的治療(適正な咬合確立での顎外固定)を提案。これまでの病歴とご家族の意向より,保存的治療を開始した。治療内容は口腔環境整備 (う蝕処置,歯周治療,外科処置) と上下顎義歯製作による咬合再建 (咬合挙上) を施行。その後は顎関節脱臼の発症もなくなり,結果として栄養状態の改善にも繋がった。なお,本報告の発表について患者本人(もしくは代諾者)から文書の同意を得ている。
 高齢者の顎関節脱臼は比較的多く遭遇する。特に基礎疾患や認知機能低下,意思疎通困難などの場合,苦慮する。習慣性顎関節脱臼の治療は,上下顎顎間固定,チンキャップや弾性包帯などにより開口制限を行う非観血的処置や様々な観血的処置が施行されてきた。一般的に非観血的処置の再発の可能性は高いとされるが,高齢者や基礎疾患を有する患者に観血的処置は適応外とされることが多い。今回,脳血管障害発症後,口腔環境悪化の状態で顎外固定を施行したが,再脱臼防止には至らなかった。そこで歯科治療ならびに義歯作製による咬合再建と顎外固定で再脱臼を防止でき,適切な咬合再建よる習慣性顎関節脱臼の治療に寄与できたと思われる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)