The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター » 摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 10, 2022 5:00 PM - 6:00 PM 摂食P1 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[摂食審査P-02] 多職種が連携して介入したことで,くも膜下出血の後遺症による嚥下障害患者の食形態が向上した一例

○上杉 雄大1,2 (1. 昭和大学歯科病院口腔リハビリテーション科、2. 医療法人社団百瀬歯科医院)

【目的】
くも膜下出血の後遺症として嚥下障害を生じることは多くの報告を認める。また,臨床の現場では嚥下機能が低下した患者に対し,食形態を制限したために食思不振となる場面をしばしば認める。今回くも膜下出血後に嚥下機能が低下し,食形態を制限されたことで食思不振となった患者が,多職種が連携して介入したことで,食形態が向上,食思不振の改善が得られた症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
69歳の男性。既往歴;2008年くも膜下出血,2009年水頭症。現病歴;2016年4月, A病院にて誤嚥性肺炎により入院加療を行った。入院中,嚥下機能の低下に伴い食形態を変更したところ食思不振を生じ,体重減少を認めた。退院後,嚥下機能の改善,食形態の改善を主訴に当院紹介受診となった。現症;BMI:20,食形態は嚥下調整食学会分類2021(以下学会分類):2-1。初診時嚥下造影検査にて,学会分類:2-1摂取時に,嚥下反射の遅延,咽頭残留,喉頭侵入を認めたが,明らかな誤嚥は認めなかった。水分では,少量の不顕性誤嚥を認めた。 なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。主治医と連携し,口腔清掃を徹底し,間接訓練として喉頭挙上訓練,おでこ押し訓練,呼吸訓練の実施し,食思不振の改善,低栄養の予防を目的とし酵素処理食品(アイート®)と栄養補助食品を用いて直接訓練を開始した。全身状態の変化を認めず,嚥下造影検査にて嚥下機能の再評価を実施した後に,段階的に食形態を向上させた。食形態の改善に伴い,食思不振は改善し,体重も増加傾向を認めた。訓練開始12か月後に,一部常食の摂取が可能となった。しかし、徐々に自宅での嚥下訓練に対するアドヒアランスの低下を認めたため,ケアマネジャー,訪問言語聴覚士と連携し,嚥下訓練を継続した。多職種との情報共有により,患者本人の意欲が増し,アドヒアランスが向上した。その後,誤嚥性肺炎の診断を2回受けたが,訓練開始70か月後の現在まで,一部制限はあるものの常食の経口摂取を継続している。
【結果と考察】
本症例では,くも膜下出血の後遺症による嚥下機能の低下,食欲不振が認められた。それに対し,歯科医師のみではなく多職種が連携して長期間にわたり対応を継続したことで,経口摂取が維持され,食形態の向上,低栄養の予防が可能となったと考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)