The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 10, 2022 5:00 PM - 6:00 PM 摂食P1 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[摂食審査P-04] ワレンベルグ症候群に対して頸部回旋嚥下にて対応し経口摂取可能となった一症例

○岩田 雅裕 (サンズデンタルクリニック)

【目的】
 ワレンベルグ症候群は、後下小脳動脈や椎骨動脈の血栓症によって、延髄特に外側部位に障害を発する神経疾患で、突然の頭痛、めまい、嘔吐から発症し、四肢の温痛覚障害、構音障害、嚥下障害をきたすこともある。今回われわれは ワレンベルグ症候群の嚥下障害に対して、頸部回旋嚥下が有効で改善した一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 62歳、男性。2018年2月、嘔吐、めまい、嚥下障害出現し、某病院救急搬送。頭部MRI検査にて左側延髄外側に虚血性病変を認め、ワレンベルグ症候群と診断された。保存的加療されたが、嚥下障害は残存、精査目的で当院紹介された。既往歴に糖尿病、高血圧があった。現病歴は2018年5月15日当院初診。構音障害はなく、右側顔面の軽度麻痺(口唇周囲)を認めた。四肢の麻痺は認めないが、立位にて右へのふらつきを認めた。栄養状態は経鼻胃管を使用しているが、喀痰を著明に認め、むせを頻繁に認めた。口腔内所見は、歯牙欠損は認めなかった。 紹介元病院での嚥下障害の評価は、RSSTは1回、MWSTは2mlでむせを認めはじめ、評点3。2018年4月実施のVF所見は、口腔―咽頭間の嚥下による送り込みはほぼ良好であるが、咽頭―食道への送り込みは困難で、一部は喉頭侵入を認めた。
 患者本人の理解度良好で、経口摂取希望が強いことから、早期の胃管栄養からの離脱、嚥下訓練による経口摂取を目標とした。当院紹介後、管理栄養士による食事形態、言語聴覚士による直接・間接嚥下訓練、歯科衛生士による間接嚥下訓練、誤嚥性肺炎予防のための口腔衛生指導を定期的に行った。直接訓練では、交互嚥下、複数回嚥下、頸部回旋嚥下などを実施した。特に頸部回旋嚥下ではむせも少なく良好であった。2018年6月実施のVFでは、右回旋嚥下で、食道への送り込みも良好で、咽頭への一部食片残留は認めるものの、誤嚥は認めなかった。とろみ食での右頸部回旋嚥下にて誤嚥を認めないことを確認し、胃管抜去、外来通院とした。外来において嚥下訓練の継続、VEによる評価を継続している。
なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 本症例は直接訓練、間接訓練を実施することにより、胃管からの離脱、外来での経過観察へと移行できた。多職種の連携が嚥下機能改善に繋がったものと考えられる。(倫理審査対象外)(COI開示:なし)