[摂食審査P-05] 延髄外側梗塞症候群による摂食嚥下障害に対して保存的治療から外科治療へ移行した1例
【目的】
延髄外側梗塞では、咽頭や喉頭の麻痺が出現しやすい。今回、延髄外側梗塞症候群による摂食嚥下障害に対して摂食嚥下リハビリテーションを行い、保存的治療から外科治療へ移行した1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
69歳、男性、既往歴は高血圧、糖尿病、脂質異常症、膀胱癌であった。2020年6月に失調、嚥下障害により入院し、右延髄外側梗塞(延髄外側症候群)と診断された。同年8月に回復期病院に転院し、同月に嚥下機能評価の依頼があり介入を開始した。初診時は、カフ付きカニューレと経鼻胃管栄養を使用しており、経口摂取は行っていなかった。嚥下内視鏡検査(VE)を実施したところ右声帯の運動麻痺が見られ、咽頭収縮は右側が不良であった。 続いて、嚥下造影検査(VF)を実施した。座位にて中間のとろみ水を嚥下させたところ食道入口部開大不全を認め、咽頭残留と誤嚥を呈したが、嚥下時の食塊は左側優位に通過していた。そのため、左側傾頚部右回旋にて検査を継続したところ誤嚥せず嚥下可能であった。STにバルーン拡張訓練と舌骨上筋の筋力強化訓練、同姿勢での直接訓練を指示した。初診時から2週間後にスピーチカニューレに変更となり、1ヶ月後には、カニューレが抜去されたが、気息性嗄声を呈しており、STに声門閉鎖の訓練を指示した。嚥下機能については、座位頚部右回旋にて、全粥やとろみ水を誤嚥せずに摂取可能であったため、全粥刻み食にて昼のみ1食開始とした。翌月には、交互嚥下を行いつつ、軟菜食の摂取が可能であった。しかし、食事終盤の嚥下時の疲労感のため、補助栄養剤を併用し、経鼻胃管栄養を抜去した。その後1ヶ月間、嚥下障害については、著変なく経過したが、気息性嗄声は残存した。早期の職場復帰のため発声障害に対する治療を本人が希望し、他院耳鼻咽喉科へコンサルテーションを行った結果、嚥下改善術と喉頭形成術の提案があった。患者と相談したところ手術に同意し、転院となった。なお本報告の発表については患者本人から文章による同意を得ている。
【結果と考察】
手術後、常食が摂取可能となり、気息性嗄声も改善した。重度の発声や嚥下障害に対しては、保存的治療の反応が乏しい場合、比較的早期であっても、患者の要望を聞きながら、外科治療を含めた治療方針を検討することが必要であると考えられた。
(倫理審査対象外)(COI開示:なし)
延髄外側梗塞では、咽頭や喉頭の麻痺が出現しやすい。今回、延髄外側梗塞症候群による摂食嚥下障害に対して摂食嚥下リハビリテーションを行い、保存的治療から外科治療へ移行した1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
69歳、男性、既往歴は高血圧、糖尿病、脂質異常症、膀胱癌であった。2020年6月に失調、嚥下障害により入院し、右延髄外側梗塞(延髄外側症候群)と診断された。同年8月に回復期病院に転院し、同月に嚥下機能評価の依頼があり介入を開始した。初診時は、カフ付きカニューレと経鼻胃管栄養を使用しており、経口摂取は行っていなかった。嚥下内視鏡検査(VE)を実施したところ右声帯の運動麻痺が見られ、咽頭収縮は右側が不良であった。 続いて、嚥下造影検査(VF)を実施した。座位にて中間のとろみ水を嚥下させたところ食道入口部開大不全を認め、咽頭残留と誤嚥を呈したが、嚥下時の食塊は左側優位に通過していた。そのため、左側傾頚部右回旋にて検査を継続したところ誤嚥せず嚥下可能であった。STにバルーン拡張訓練と舌骨上筋の筋力強化訓練、同姿勢での直接訓練を指示した。初診時から2週間後にスピーチカニューレに変更となり、1ヶ月後には、カニューレが抜去されたが、気息性嗄声を呈しており、STに声門閉鎖の訓練を指示した。嚥下機能については、座位頚部右回旋にて、全粥やとろみ水を誤嚥せずに摂取可能であったため、全粥刻み食にて昼のみ1食開始とした。翌月には、交互嚥下を行いつつ、軟菜食の摂取が可能であった。しかし、食事終盤の嚥下時の疲労感のため、補助栄養剤を併用し、経鼻胃管栄養を抜去した。その後1ヶ月間、嚥下障害については、著変なく経過したが、気息性嗄声は残存した。早期の職場復帰のため発声障害に対する治療を本人が希望し、他院耳鼻咽喉科へコンサルテーションを行った結果、嚥下改善術と喉頭形成術の提案があった。患者と相談したところ手術に同意し、転院となった。なお本報告の発表については患者本人から文章による同意を得ている。
【結果と考察】
手術後、常食が摂取可能となり、気息性嗄声も改善した。重度の発声や嚥下障害に対しては、保存的治療の反応が乏しい場合、比較的早期であっても、患者の要望を聞きながら、外科治療を含めた治療方針を検討することが必要であると考えられた。
(倫理審査対象外)(COI開示:なし)