The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 10, 2022 5:00 PM - 6:00 PM 摂食P2 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[摂食審査P-08] 多職種連携によりお楽しみとして経口摂取が可能になった精神科入院中患者の1例

○今田 良子 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 摂食嚥下障害患者に対するチーム医療の重要性が提唱されて久しい。今回、精神科病院に入院中で低栄養状態となったが、多職種連携によりお楽しみ程度の経口摂取が可能になった1例を担当したので報告する。 
【症例の概要と処置】
 75歳、女性。20XX-1年11月頃より食事量が徐々に低下し、20XX年2月誤嚥性肺炎と診断され禁食、嚥下評価希望で主治医より当科に依頼となった。パーキンソン病、うつ病、慢性関節リウマチ、誤嚥性肺炎の既往がある。 内服薬はスボレキサント、ランソプラゾール、オランザピン、トラゾドン塩酸塩、レボドパ等であった。嚥下機能評価により、口唇の閉鎖不全、口腔期の送り込み不良、咽頭収縮不良、嚥下反射惹起遅延、多量の咽頭残留が観察され、低栄養状態が進行しているため経鼻経管栄養を開始した。お楽しみ程度の経口摂取が可能となる事を目標に嚥下リハ計画を立案した。口腔内の乾燥や痰の貯留を認めた為看護師に口腔ケアを指導し、週1回歯科医師による口腔管理を行った。栄養状態が徐々に改善し、口腔周囲筋のマッサージや舌可動域訓練などの間接訓練、中間とろみ水での直接訓練を開始するも、舌根沈下が進行し夜間呼吸苦と日中の異常呼吸音が出現した。 精神状態の悪化もあり直接訓練を一時中断した。睡眠検査等が施行され、その結果持続陽圧呼吸療法(以下:CPAP)が導入された。その後精神状態が安定し、向精神薬の服薬調整を行った。医師、歯科医師、歯科衛生士、看護師に情報を共有し、嚥下リハを進めた。なお、本症例は発表にあたり代諾者から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 介入から22ヶ月後、栄養状態改善傾向認め 、服薬調整、看護師による毎日の間接訓練の成果もあり、舌根沈下が改善した。呼吸苦は軽減し、CPAPの離脱が可能となった。歯科医師は嚥下機能評価を定期的に施行し間接訓練、直接訓練の指導を継続して行った。咽頭腔の狭窄は改善し、咽頭収縮力も向上、咽頭の残留量も軽減した。 また痰の吸引頻度は、以前と比較して減少し、口腔ケア後のみ定期的に行う程度となった。ベッドをギャッジアップする時間も増え、ラジオを聴きたいなど意欲も向上した。プリンやゼリーなどをお楽しみ程度に摂取が可能となった。疾患の進行と廃用を区別した嚥下リハ計画を立て、多職種と連携して嚥下リハを継続することができた症例であった。(COI:開示なし、倫理審査対象外)