The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-03] 認知症機能低下を抱えた高齢者への口腔と食に関する地域介入~大規模団地における権利ベースの実践~

○枝広 あや子 (東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 認知症と精神保健)

【目的】
 認知機能低下した者は生活機能・口腔・身体・精神的機能低下を抱え、複合的な社会的支援ニーズがあるにも関わらず合理的配慮を受けられていない実態がある。我々は2017年より、認知症の社会的包摂と多職種による本人の視点に立った統合的調整を目指し、都市部の大規模団地に認知症支援のための地域拠点(以下 拠点)を開設した。拠点では医師、保健師、心理専門職、精神保健福祉士、社会福祉士および歯科医師等が権利ベースのアプローチを重要原則として活動し、居場所機能と相談機能を兼ね備えた認知症支援を行っている。そのなかで複合的な支援ニーズがある認知機能低下した高齢者を対象に訪問口腔調査を行い、実態把握の上で必要に応じ社会的支援のコーディネートを行った。本報告ではコーディネート事例を中心に地域活動実態を報告する。
【方法】
 複合的な支援ニーズがある認知機能低下した高齢者126名に対し電話連絡の上、訪問口腔調査を行った。訪問口腔調査において、独居高齢女性M氏(85歳)が低栄養傾向と咀嚼困難を抱え、介護支援専門員が手配した配食サービスの食事形態が不適切であることを確認した。語りからは、M氏が「食べるのに時間がかかる」と発言したことを契機に、介護支援専門員から配食のムース食を勧められた経緯が得られた。M氏本人は要支援2ながら屋外活動を活動的に行っており、ムース食に不満を持ち自ら食品店で焼き鳥等を購入し食べていた。M氏はシェーグレン症候群と診断されており、不十分な咬合接触の義歯を使用し、咀嚼ガムスコア2、簡易栄養状態評価表で低栄養リスク状態であった。M氏の了解の上で、介護支援専門員と同行し社会的支援のコーディネートを行った。
【結果と考察】
 介護支援専門員とM氏とともに本人の咀嚼機能の検査内容、本人の希望を共有し、歯科受診と適切な食形態の配食の支援を行った。介護支援専門員の支援のもとM氏の義歯は修理が開始され、継続可能で本人の希望に配慮した配食等の支援が得られた。拠点において地域の住民、介護関係専門職との顔の見える関係を築く中で、受診前相談等の社会的支援の仕組みが出来つつある。口腔の健康や食は普遍的で生活に密着しているがゆえに課題が発見されにくく、自宅訪問で初めて課題が認識されるケースがあり地域支援が望まれる。
(COI開示:なし、東京都健康長寿医療センター倫理委員会承認番号2019-3146-36)