The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター » 摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-05] 地域歯科医師会との連携による食支援が可能な歯科医師養成の取組み~高知県歯科医師会との事例~

○田中 信和1、野原 幹司2、島田 力3、阪井 丘芳2 (1. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部、2. 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室、3. 島田歯科)

【目的】
 地域包括ケアの推進に伴い,それぞれの地域のリソースを活用した医療・介護体制の構築が急務となっている. なかでも高齢者の摂食嚥下障害への対応(食支援)は,有病率の高さと内容の多様性から多くの人材が必要とされ,歯科医療者もその担い手として積極的な貢献が求められている.この傾向は,人口の高齢化率が全国トップクラスであることにくわえ,医療者の減少と地域偏在が進んでいる高知県では顕著であり,食支援のニーズが非常に高い.しかしながら一方で,歯科の対応は遅れており,訪問で食支援を提供する施設は県内1施設のみという状況であった.今回, この状況を改善すべく高知県歯科医師会と連携し摂食機能療法専門歯科医師として関わった歯科医師養成のための取組みを報告する.
【方法】
 本事業は,「高知県の全域で食支援に貢献できる歯科医師の養成」を目的とし,1)各地域のコアとなるメンバーを育成する,2)口腔にとどまらず,嚥下障害の原因とその予後を推察できる知識と技術を学ぶ,3)それぞれの現場に対応できる臨床力を養う,の3点を目標とした.その目標達成のために,事業を3つのフェーズに分けて展開させていった.フェーズ1は歯科による食支援の重要性の周知と研修メンバーの選抜とし,歯科医師会の全会員を対象とした講演会を開催することで,事業内容の要旨説明とコアメンバーの募集を行った.続くフェー ズ2は,コアメンバーへの研修を主とし,食支援に必要な知識の講義と実習,ならびに地域にある施設の協力の下,それぞれ現場で症例検討などの実地研修を行った.特に実地研修に関しては,病院,介護老人保険施設, 特別養護老人ホーム,障害者施設合計8施設の協力を得ることができ,「現場で共に学ぶ」本研修の大きな特徴となった.さらにフェーズ3は,コアメンバーによる各地での実践とし,研修を修了したメンバーが連携し,食支援の実践だけでなく,定期的な勉強会の開催や情報の発信を行っている.
【結果と考察】
 2018年から開始された本事業は,コロナ下での中断があったものの,2期継続して行われており,合計14名の歯科医師が研修を受けるに至った.この結果,食支援の要請に応えることのできる歯科医師の増員,研修協力先をはじめとする施設・在宅への訪問依頼や情報発信の機会も増加し,歯科医師が活躍する食支援の場が拡大している.(倫理審査:対象外、COI開示:なし)