The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター » 摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-10] 認知症対応型共同生活介護利用者に対する摂食機能療法専門歯科医師としての活動

○須田 牧夫 (医療法人社団 横浜みらい会 横浜南仲通歯科)

【目的】
 申請者は,認知症対応型共同生活介護(以下グループホーム)利用者に対し摂食機能評価を含めた定期的な歯科訪問診療を行っている。特に認知症患者の食事では多くの問題を抱え,グループホーム職員が対応に苦慮している場面に多く遭遇する。そこで,安全な食事提供や低栄養の改善のため,施設職員,介護支援専門員,訪問医師,訪問看護師と協働し安全に栄養摂取が可能となった症例について報告する。
【症例の概要と処置】
 92歳,女性。主訴は唾液でむせ,食事中,食後にむせる(施設職員より)ことであった。既往歴は脳出血,肺炎である。原疾患は脳出血後遺症(右麻痺),失語症,アルツハイマー型認知症である。感染症,アレルギーなし,抗精神病薬の服用はない。認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa。初診時の体重は32.1kg(BMI:15.9)であった。摂食機能評価により食塊形成不良,食塊移送不良,喉頭挙上不良,軟口蓋挙上不良,咽頭収縮力不良, 嚥下反射惹起遅延,唾液誤嚥,喀出力の低下を認めた。これらの評価に対し,口腔衛生管理方法の再確認,食形態の変更(学会分類2013,コード4→2—2),補助栄養食品の追加,食事介助時の姿勢調整(60度リクライニング位),介助方法の指導(一口量,交互嚥下),間接訓練として筋刺激訓練法を開始した。施設職員もむせる原因,適切な食事形態,介助方法を知りたいとの訴えがあり,摂食機能療法に対する報告とは別に摂食嚥下機能の基本,認知症患者の食事に関する注意点などの職員向け講習会を開催し,安心,安全な食事介助方法の理解を深めた。
なお,本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 摂食機能療法後,食事中,食後のむせはなくなり,徐々に体重の改善が認められた。3か月後の体重は39.1kg (BMI:19.4),6か月後には体重40.6kg(BMI:20.1)と安定した。施設職員より,安心して食事の介助が行えるようになり,食事介助のストレスがなくなったとのコメントがあった。現場で対応している職員が安心して食事介助を行える環境の整備,知識の提供,多職種との連携を継続できたことが安全な経口摂取につながったと考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)