一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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歯科衛生士部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:歯科衛生士部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P衛生-01] 患者のモチベーション向上を中心とした歯科衛生士のアプローチが口腔機能管理の継続につながった症例

○飯干 由茉1、竜 正大2、山下 秀一郎3、上田 貴之2 (1. 東京歯科大学水道橋病院歯科衛生士部、2. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座、3. 東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座)

【目的】
口腔機能低下症は自覚症状に乏しいため、口腔機能管理に対する患者のモチベーションを高く保ち続けることが難しいことが多い。今回、口腔機能低下症患者に対し、歯科衛生士が中心となって口腔機能管理へのモチベー ションの維持を図ったことにより機能向上につながった症例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】
患者は78歳女性で咀嚼困難を主訴に来院した。5年前に上顎総義歯を装着し繰り返し調整したが、咀嚼時疼痛が継続していたという。義歯調整により疼痛への対応を行っても食事に時間がかかるとの訴えから口腔機能低下を疑い、口腔機能精密検査を行った。咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧および咀嚼機能低下の4項目が該当し口腔機能低下症と診断された。義歯製作と並行して口腔機能管理を行い、舌可動域訓練と舌の抵抗訓練等を指導した。
義歯装着後、口腔機能管理を継続したが、患者は次第に訓練を行わなくなっていった。義歯装着1年後、硬いものが噛みにくいとの訴えが継続し、口腔機能精密検査による再評価では口腔不潔、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、咀嚼機能低下が認められた。歯科衛生士が口腔機能管理に参画したが、患者は口腔機能への関心が低く、 説明に対して理解は示すが訓練の継続にはつながらなかった。そのため、まず患者と積極的にコミュニケー ションを図り、生活習慣や食生活に寄り添った会話を心掛けた結果、患者の自発的な発言が増え、口腔機能にも興味を示すようになった。同時に複数の訓練を並行することは難しいと考え、舌抵抗訓練に絞るなど訓練内容を単純化するとともに指導内容を記載した用紙を渡し、家での訓練継続をしやすい工夫を行った。その結果、義歯装着1.5年後の再評価では舌口唇運動機能や咀嚼機能が向上した。現在も継続して管理を行っている。
なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【結果と考察】
本症例は自覚症状に乏しく口腔機能に関心の少ない口腔機能低下症患者に対し、口腔機能だけでなくモチベー ションの向上を中心として、家族の話などを含めた積極的なコミュニケーションと患者の状態に応じて訓練を行ったことにより、継続的な口腔機能管理が実現できた。全身の健康も考えるようになり毎朝ウォーキングをするなど、口腔健康への意識の高まりをきっかけにフレイル予防にも繋がったと考えられる。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)