The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスターコンペティション

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歯科衛生士部門

Sat. Jun 11, 2022 3:00 PM - 4:00 PM 優秀ポスター:歯科衛生士部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P衛生-04] 歯科衛生士の病棟ラウンドにより,造血幹細胞移植を受ける高齢患者の口腔健康管理を早期から開始できた症例

○髙澤 理奈、原田 枝里、服部 馨、久野 彰子 (日本医科大学付属病院 口腔科)

【目的】
 当院血液内科では,造血幹細胞移植の予定となった患者の口腔健康管理を,口腔科に依頼する仕組みが定着している。また口腔科においては,歯科衛生士が週に1回,血液内科病棟をラウンドし,新たに入院した患者の口腔スクリーニングを行っている。今回このラウンドによって,造血幹細胞移植を受ける高齢患者の口腔健康管理を早期から開始できた症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 68歳,男性。悪性リンパ腫,心筋梗塞,下肢静脈血栓症の既往あり。X年6月に頸部腫瘤を主訴に当院受診し悪性リンパ腫再発の診断となり入院。X年7月,歯科衛生士ラウンドでう蝕,動揺歯,口腔カンジダ症の所見が認められ,主治医と病棟看護師に報告し当科受診。X年10月までに,抜歯,う蝕治療,感染根管治療,口腔カンジダ症治療,口腔衛生管理を実施した。歯科治療は,血液データに留意しながら計画を立て,患者の体調変化にも対応しながら進めた。X年11月に自家末梢血幹細胞移植となり,移植期の口腔衛生管理に移行。移植期は前処置開始前にPMTC,TBI,含嗽指導,保湿指導を実施した。移植後は週に1~2回クリーンルームに往診し,評価とセルフケア支援を行った。体調によってセルフケア不足になることが心配されたが,口腔衛生状態は良好に維持された。口腔有害事象は,口腔乾燥と味覚障害が顕著であった。これに対し,保湿指導や粘膜清拭指導を行い,味覚は改善するまで期間を要することを説明し,摂取できそうなものとしてゼリー飲料や炭酸飲料等を試すように薦めた。重大な有害事象を起こすことなく経過し移植後12日で生着,X年12月移植後22日で自宅退院となった。
なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【結果と考察】
 造血幹細胞移植は高度な免疫不全状態となるため,移植前に口腔内の感染源を除去し,口腔衛生管理を行う必要がある。しかし,血液内科からの口腔科への依頼時期によっては,移植までの期間が短く,適切な口腔健康管理が困難となる場合がある。今回,歯科衛生士の病棟ラウンドによって早期に口腔の問題を見つけ出すことができ,移植前までに必要な歯科治療を終了し,口腔衛生管理に十分な期間を確保できた。今後も早期から適切な口腔健康管理を提供できるよう,このような活動を継続したい。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)