一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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歯科衛生士部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:歯科衛生士部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P衛生-05] 摂食機能障害患者に対する急性期病院から在宅診療へのシームレスな介入~歯科衛生士による連携~

○木村 菜摘1、谷口 裕重2、井箟 梢会3、大塚 あつ子2、中尾 幸恵2,3、中澤 悠里2,3、近石 壮登2,3、近石 登喜雄4 (1. 朝日大学病院 歯科衛生部、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 医療法人社団登豊会近石病院 歯科・口腔外科、4. 医療法人社団登豊会近石病院 外科)

【目的】
 近年,首都圏では歯科医療者が在宅診療で摂食嚥下リハビリテーションを行うことが一般的になってきた。一方,首都圏以外では未だ摂食嚥下リハビリテーションの担い手が不足しており,急性期病院を退院後にその介入が途絶えてしまい,機能的には食べられるが「食べさせてもらえない」患者は少なくない。今回,歯科衛生士(DH)が中心となり施設間で連携することで,シームレスな介入を行った症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 71歳,女性。既往歴:高血圧症。現病歴:X年8月,くも膜下出血を発症し,左側半側麻痺,言語障害,嚥下障害を呈した。同年10月,急性期病院でL-Pシャント術を施行し,摂食嚥下機能評価依頼にて院内の歯科へ紹介受診となった。初診時は,JCS200,口腔清掃状態は不良で,慢性的な湿性音を認めた。初回の評価では唾液誤嚥を頻回に繰り返し,1~2時間毎に吸引を実施しており,口腔衛生管理および間接訓練にて介入となった。その後, 覚醒状態も徐々に改善し,第67病日には中間とろみ1mlを用いた直接訓練に移行した。しかし,重度嚥下障害の残存により,経口摂取には長期間の介入が必要であると診断し,第120病日に胃瘻造設となった。第190病日に,慢性的な咽頭吸引が必要であるも,少量のゼリーを摂取し,自宅へ退院となった。退院後は在宅歯科診療も行っている地域中核病院へ紹介された。急性期病院から在宅歯科診療へ引き継ぐ際,患者への介入ポイントや重要点, 摂食嚥下機能評価の結果や訓練内容に関し,入念な情報提供および情報交換を実施した。発表にあたり、患者のプライバシー保護に配慮し、患者家族から書面にて同意を得た。(倫理審査対象外)
【結果と考察】
 在宅診療では,DHによる口腔衛生管理および嚥下間接訓練から開始し,退院40日にはゼリーによる直接訓練に移行,退院100日に1食経口摂取,退院210日に3食経口摂取が可能となった。食事回数,食形態を上げる際には急性期病院と連携し摂食嚥下機能評価および栄養評価を実施した。栄養状態もBMI:18→22,AC:21→22.5,CNAQ:15→29と改善した。多職種連携が一般的となる一方で,歯科医療者間や施設間の連携はさらに肝心となる。本症例では,多職種連携と同時に専門職種間での緊密な連携の重要性が改めて示唆された。(COI開示:なし)