一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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地域歯科医療部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:地域歯科医療部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P地域-02] 東京都内某区で実施した後期高齢者歯科健診から見えてきたもの

○鈴木 治仁1、小野寺 哲夫2、右田 大三彦1、古川 潤一郎2、和栗 範幸1、河森 一賢2、鈴木 淳1、大木 研一2、福内 恵子3、河上 清香4、飯島 勝矢5、菊谷 武6 (1. 品川区荏原歯科医師会、2. 品川区品川歯科医師会、3. 品川区健康推進部、4. 品川区保健所品川保健センター、5. 東京大学 高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター、6. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【目的】
 東京都品川区は東京都品川歯科医師会・荏原歯科医師会に委託し後期高齢者歯科健診事業を実施している。この事業では、口腔機能評価・フレイル評価を通じて、高齢者の全身の健康維持・向上を図り、心身ともに自立した生活を送ることを目的としている。本研究では、本事業より得られたデータをもとに地域在住高齢者の口腔内状態と口腔機能、フレイルの実態およびその関連について検討した。
【方法】
 対象は、施設入所者を除いた品川区に在住する76または78歳になる後期高齢者医療制度加入の者とした。本事業は、同区内の歯科医院にて、一般口腔内健診、口腔機能評価、フレイル・サルコペニア評価を実施した。健診項目は、1全身状態、体重減少の有無、2かかりつけ歯科医の有無、歯科受診状況、自覚している口腔内の問題。 3現在歯の状況、4オーラルディアドコキネシス(ODK)、咀嚼能力自己評価、EAT-10を実施した。さらに、 5指輪っかテスト、イレブンチェックを評価した。
【結果と考察】
 822名(男性325名、女性497名)が受診した。受診者の38%は、1年以内の歯科健康診査を受けていいない者であった。13.7%に半年間に2から3キロの体重減少が認められた。現在歯数20歯未満は29.2%、咀嚼能力低下は13.3%、EAT-10 3点以上は8.6%、ODK6回未満は31.9%、サルコペニア疑いは11.9%、フレイル疑いの者は29.1%にそれぞれ認められた。20歯以上を有する者の8.3%に咀嚼困難者が認められた。フレイルの疑いの者に、 歯科健康診断受診していない者、主観的口腔健康観の低い者、20歯未満の者、嚥下機能の低下した者が有意に多く認められた。サルコペニアの疑いの者は、嚥下機能の低下した者、舌運動が低下した者に有意に多く認められた。体重減少を示した者は、咀嚼能力低下、フレイル、サルコペニアの疑いのある者に有意に多く認められた。
本健診を通じて、歯科未受診者を多く受診させることができた。咀嚼機能や嚥下機能は体重減少、フレイルやサルコペニアと関連を示した。現在歯数を残すだけでは口腔機能は維持できない者もみられた。以上より、歯科医院におけるフレイル検診の重要性が示唆され、歯科受診を促すことでフレイル対策が可能となる可能性が示された。
(COI開示:なし)(倫理委員会承認番号NDU-T2020-36)