一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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一般部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:一般部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P一般-03] 脳卒中急性期から回復期にかけた継続的歯科介入による口腔環境の変化-OHAT-Jを用いた検討-

○坂井 鮎1,2、関本 愉3,4,5、松尾 浩一郎5 (1. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科、2. 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学専攻、3. 医療法人宝生会 PL病院 歯科、4. 藤田医科大学医学部 歯科・口腔外科学講座、5. 東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】
 脳卒中患者の悪化しやすい口腔環境に対して,急性期や回復期での歯科介入の効果が報告されている。しかし, 脳卒中急性期から回復期にかけての継続した歯科介入の効果に関する報告はない。そこで,本研究では,脳卒中急性期から回復期にかけた継続的歯科介入による口腔環境の変化を,日本語版Oral Health Assessment Tool (OHAT-J) を指標として検討した。
【方法】
 当院急性期病棟に入院し,その後同院の回復期リハビリテーション病棟(回復期)転棟後まで継続的に歯科介入した脳卒中患者98名を対象とした。急性期入院時(発症3.4±5.0日後),回復期入棟時(回復期入棟5.0±5.4日後),および回復期転棟1か月後(回復期入棟39.3±14.4日後)の3時期における口腔環境をOHATにて評価した。また,行った歯科処理の内容を記録した。3時期におけるOHATの合計スコアの変化をFriedman検定にて,各8項目の変化をMcNemar検定にて分析した。
【結果および考察】
 OHAT合計スコアの中央値[四分位範囲]は,急性期入院時では6.0[4.0-8.0]だったが,回復期入棟時では4.0[2.0-6.0]と有意に改善し(P<0.001),回復期転棟1か月後では3.0[2.0-5.0]とさらに改善していた(P=0.001)。項目毎にみると,急性期では,口唇,歯肉頬粘膜,唾液,義歯,口腔清掃のスコアが有意に改善し,回復期では,口唇,舌,唾液,残存歯,義歯のOHATスコアが有意に改善していた。歯科介入内容は,急性期では口腔衛生管理中心であったが,回復期では,う蝕処置(9.2%),抜歯(14.3%),義歯新製(11.2%)などの治療内容の割合が増加していた。
 本結果より,脳卒中の急性期から回復期における全身機能回復に併せた継続的な歯科介入により,急性期,回復期ともに口腔環境が改善することが示唆された。急性期では,口腔衛生管理により口腔衛生環境が改善し,回復期では,抜歯や義歯新製等の歯科治療介入によりさらに口腔環境が改善したと考えられた。
(COI開示:なし)
(藤田医科大学医学部 倫理審査委員会:承認番号 HM18-026)