一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:一般部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P一般-05] 在宅療養高齢者における歯科訪問診療継続可否の予測因子の検討

○田中 公美1,2、菊谷 武1,3、高橋 賢晃1,2、佐藤 志穂1、市川 陽子1,2、田中 祐子1、富田 浩子1、田村 文誉1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、3. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)

【目的】
 在宅歯科医療において、どのような患者因子ならびに環境因子が、受療継続・非継続の要因になりうるのか十分に検討されていない。本研究の目的は、初診から半年時点での転帰および受療継続可否を調査することで、歯科訪問診療終了あるいは中断に至る予測因子を明らかにすることである。

【方法】
 対象は2019年5月から2020年12月の期間に東京都某市に立地する1つの在宅療養支援診療所によって医科訪問診療が開始された在宅療養高齢者である。担当医師から紹介を受け、歯科訪問診療に同意した患者を前向きに検討した。調査項目は、基礎情報、Charlson comorbidity index(CCI)、口腔状態、摂食嚥下機能、栄養状態、 生活機能である。診断に基づき歯科治療を行い、半年後に再評価を行った。半年時点での受療継続可否と各項目との関連性をカイ2乗検定、ロジスティック回帰分析で解析した。本研究は日本歯科大学倫理委員会(承認番号NDU‐T2020‐13)の承認を得て行われた。

【結果と考察】
 ベースライン調査が可能であった74名のうち、再評価までに診療拒否となった7名を除外した67名(男性33名、女性34名、年齢中央値86歳(67-97歳)を最終対象者とした。Barthel Indexの中央値は50点(0-100点)であった。対象者の54名(80.6%)は同居家族あり、12名(17.9%)は独居であった。半年後の受療継続可能者は32名(47.8%)、不可能者は35名(52.2%)であった。継続不可能となった理由は、死亡19名(59.4%)、施設入所5名(18.5%)、入院3名(9.4%)であった。受療継続可否と各項目の関連性と検討したところ、世帯構成との間に有意な関連は認めなかった。継続不可能者では、継続可能者に比してBMIが19未満の者が有意に多かった。同時にOHATの「舌」項目において、1点以上である「変化および病的」を示す者が有意に多く、これらは年齢、CCIを調整した解析においてもいずれも有意であった。
 以上より、医科訪問診療が開始された在宅療養高齢者において、歯科訪問診療の継続は困難な者が多く、低栄養の存在および舌の清掃性低下、舌の病的変化 、舌運動機能の低下が受療継続可否の予測因子となりうる可能性が示唆された。(本研究は、科学研究費補助金若手研究:20K18813によった。COI 開示:なし)