一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

講演情報

ランチョンセミナー

共催セミナー » [ランチョンセミナー2] 超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有歯科材料への期待

ランチョンセミナー2
超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有歯科材料への期待

2022年6月11日(土) 12:30 〜 13:10 第2会場 (りゅーとぴあ 5F 能楽堂)

共催:株式会社松風

[LS2] 超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有歯科材料への期待

○猪越 正直 (東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【略歴】
2006年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2011年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全部床義歯補綴学分野修了
2014年 KU Leuven (University of Leuven), Doctoral School of Biomedical Sciences修了
2015年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 助教
2021年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 講師
現在に至る

日本老年歯科医学会専門医
Dental Materials Senior Advisor
【抄録】
 超高齢社会を迎えた日本においては、今後も高齢者人口の増加が予想されている。日本だけでなく、この傾向は世界的に見ても同様である。日本の義歯装着者数の割合は減少しているものの、高齢者数の増加により、今後も臨床では義歯の需要は見込まれると考えられる。高齢者においては、義歯装着やセルフケアの困難さ等から、口腔内環境の悪化が認められるケースが多くある。
 株式会社松風が開発したSurface reaction-type Pre-Reacted Glass-ionomer (S-PRG) フィラーは、多機能性ガラス(フルオロボロアルミノシリケートガラス)に対して微細化処理、及び多孔質ガラス化表面処理を施した後、ポリアクリル酸水溶液と反応させることで、安定化したグラスアイオノマー相をガラスコアの表層に形成させた3層構造を持つバイオアクティブ新素材として注目されている。S-PRGフィラーは、ストロンチウムイオン、ナトリウムイオン、ホウ酸イオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオン、フッ化物イオンといった6種類のイオンを徐放することにより、歯質強化能、酸緩衝能、抗菌効果を示すことが文献的に明らかとなっている。このようなバイオアクティブなS-PRGフィラー含有歯科材料を用いた高齢者の口腔内環境改善が期待される。
 我々はこれまで、セメント、義歯安定材、ティッシュコンディショナーといった材料に、S-PRGフィラーを添加し、その物性を評価してきた。特に、S-PRGフィラー含有義歯安定材やティッシュコンディショナーは抗菌効果を示すことを明らかにしている。
 本セッションでは、これらの高齢者歯科分野で応用可能なS-PRGフィラー含有歯科材料のエビデンスについて紹介させていただき、主に抗菌効果に焦点を当てながら、超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有歯科材料への期待についてお話しさせていただく予定である。