[LS7-1] 臨床で咀嚼能力測定をどう活用するか?
【略歴】
2012年 大阪大学歯学部 卒業
2017年 大阪大学大学院歯学研究科 修了
2017年 大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科 医員
2020年 新潟大学医歯学総合病院 義歯診療科 助教
2021年 新潟大学大学院医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野 助教
現在に至る
2012年 大阪大学歯学部 卒業
2017年 大阪大学大学院歯学研究科 修了
2017年 大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科 医員
2020年 新潟大学医歯学総合病院 義歯診療科 助教
2021年 新潟大学大学院医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野 助教
現在に至る
【抄録】
咀嚼は,歯や舌といった口腔器官を巧みに協調させて食品を嚥下しやすい食塊に形成する複雑な運動であり,栄養摂取の最初のステップとして重要な役割を担っている.食品をどれだけ破砕できるかという咀嚼のクオリティ,つまり咀嚼能力は,残存歯や口腔周囲組織の状態,補綴装置の種類など様々な因子の影響を受けるだけでなく,高齢者の全身健康に影響を与えることが数多くの研究によって明らかになっている.したがって,超高齢社会に突入した現在,咀嚼能力を数値化することの重要性が増している.
これまで報告されてきた咀嚼能力測定では,ピーナッツ,ニンジン,米,グミゼリー,ガムなど多種多様な検査食品が使用されてきた.その中で,グミゼリーは,硬さやサイズを自由に調整・規定できる点と,ピーナッツのように咬断片が義歯と床下粘膜の間に入りこみ疼痛が生じることがない点において,高齢者の咀嚼能力の測定に適している.野首らは,UHA味覚糖株式会社との共同研究により,咀嚼能力測定用グミゼリーと3種類の咀嚼能力測定法(全自動法,手動法,スコア法)を実用化した.
これらの測定法は,規格化されたグミゼリーを30回咀嚼させた後,咬断片を回収し,グミゼリーの破砕度をそれぞれ別の手段で評価する方法である.全自動法と手動法は,精密な結果が得られる代わりに評価の際に専用機器が必要で,スコア法は,非常に簡便な評価法であるが,測定結果に主観的判断が反映される,というようにそれぞれ一長一短がある.しかし,堀らがスマートフォンを用いた画像解析による咀嚼能力測定法を開発し,「いつでも,どこでも,誰でも,簡単に」咀嚼能力を精密に評価できるようになってきている.
現在の保険診療においては,口腔機能低下症の下位症状「咀嚼機能低下」の診断にのみスコア法が適用されるが,我々の診療科では,診査・診断や補綴治療効果の評価においても,補綴治療患者の治療前後の咀嚼能力測定にスコア法を採用している.そして,測定結果を患者にフィードバックし,過去の研究から得られたエビデンスをもとに咀嚼能力改善の目標を設定し,補綴治療のアウトカムの情報を提供することで,患者の治療に対するモチベーションの向上・維持を図っている.また,咀嚼能力測定用グミゼリーは,半量サイズの製品も上市されている.我々は,この半量グミゼリーを咀嚼障害のある高齢者や義歯装着者の咀嚼能力測定や,摂食嚥下障害患者に対する咀嚼リハビリテーションに活用している.
本セミナーでは,①咀嚼能力測定用グミゼリー(UHA味覚糖社)を用いた咀嚼能力測定法,②臨床の現場で役立つ咀嚼能力測定の活用術,③半量グミゼリーの有用性について紹介する予定である.セミナーを聴講された皆様が,咀嚼能力測定の意義を認識し,あわよくば,明日からでも自院にて咀嚼能力測定を取り入れていただけたら幸いである.
咀嚼は,歯や舌といった口腔器官を巧みに協調させて食品を嚥下しやすい食塊に形成する複雑な運動であり,栄養摂取の最初のステップとして重要な役割を担っている.食品をどれだけ破砕できるかという咀嚼のクオリティ,つまり咀嚼能力は,残存歯や口腔周囲組織の状態,補綴装置の種類など様々な因子の影響を受けるだけでなく,高齢者の全身健康に影響を与えることが数多くの研究によって明らかになっている.したがって,超高齢社会に突入した現在,咀嚼能力を数値化することの重要性が増している.
これまで報告されてきた咀嚼能力測定では,ピーナッツ,ニンジン,米,グミゼリー,ガムなど多種多様な検査食品が使用されてきた.その中で,グミゼリーは,硬さやサイズを自由に調整・規定できる点と,ピーナッツのように咬断片が義歯と床下粘膜の間に入りこみ疼痛が生じることがない点において,高齢者の咀嚼能力の測定に適している.野首らは,UHA味覚糖株式会社との共同研究により,咀嚼能力測定用グミゼリーと3種類の咀嚼能力測定法(全自動法,手動法,スコア法)を実用化した.
これらの測定法は,規格化されたグミゼリーを30回咀嚼させた後,咬断片を回収し,グミゼリーの破砕度をそれぞれ別の手段で評価する方法である.全自動法と手動法は,精密な結果が得られる代わりに評価の際に専用機器が必要で,スコア法は,非常に簡便な評価法であるが,測定結果に主観的判断が反映される,というようにそれぞれ一長一短がある.しかし,堀らがスマートフォンを用いた画像解析による咀嚼能力測定法を開発し,「いつでも,どこでも,誰でも,簡単に」咀嚼能力を精密に評価できるようになってきている.
現在の保険診療においては,口腔機能低下症の下位症状「咀嚼機能低下」の診断にのみスコア法が適用されるが,我々の診療科では,診査・診断や補綴治療効果の評価においても,補綴治療患者の治療前後の咀嚼能力測定にスコア法を採用している.そして,測定結果を患者にフィードバックし,過去の研究から得られたエビデンスをもとに咀嚼能力改善の目標を設定し,補綴治療のアウトカムの情報を提供することで,患者の治療に対するモチベーションの向上・維持を図っている.また,咀嚼能力測定用グミゼリーは,半量サイズの製品も上市されている.我々は,この半量グミゼリーを咀嚼障害のある高齢者や義歯装着者の咀嚼能力測定や,摂食嚥下障害患者に対する咀嚼リハビリテーションに活用している.
本セミナーでは,①咀嚼能力測定用グミゼリー(UHA味覚糖社)を用いた咀嚼能力測定法,②臨床の現場で役立つ咀嚼能力測定の活用術,③半量グミゼリーの有用性について紹介する予定である.セミナーを聴講された皆様が,咀嚼能力測定の意義を認識し,あわよくば,明日からでも自院にて咀嚼能力測定を取り入れていただけたら幸いである.