一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演10 口腔機能4

2022年6月12日(日) 14:45 〜 15:25 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:津賀 一弘(広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

[O10-01] 2種類の口唇閉鎖力測定器による口唇閉鎖力の比較と関連因子の検討

○中島 純子1、酒井 克彦1、鈴木 美紅2、財津 愛2、青木 理佐2、大屋 朋子2、小松 万純1、本田 健太郎1、野村 武史3、松浦 信幸1 (1. 東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座、2. 東京歯科大学市川総合病院 コ・デンタル部、3. 東京歯科大学 口腔腫瘍外科学講座)

【目的】
 摂食嚥下障害に対する訓練として,口唇・頬の運動や口唇閉鎖運動は高頻度に行われるが,口腔周囲筋の筋力と嚥下機能,全身の筋力との関連性は十分に解明されていない。また,本邦では主に2種類の口唇閉鎖力測定器が口腔周囲筋の筋力測定に使用されるが,両測定器の計測値の関係についての報告はない。そこで本研究では, 健常者と嚥下機能低下者を対象に2種の口唇閉鎖力測定器で測定した計測値を比較検討し,口腔機能,全身の筋力,筋量,筋機能との関連を解析した。
【方法】
 対象は当院歯科口腔外科を受診した摂食嚥下障害の既往がない常食摂取者(健常群)25名(男性13名,女性12名,平均年齢76 .9±6.3歳),嚥下機能が低下した入院患者28名(男性19名,女性9名,平均年齢78.0±13.4歳)とした。口唇閉鎖力は口唇閉鎖力測定器(りっぷるくん,松風)を用いてLip Seal Strength (LSS)を,口唇力測定器(リップデカム,コスモ計器)を用いてLip Closure Strength (LCS)を測定し,最大舌圧,オーラルディアドコキネシス(OD)/ta/,握力,下腿周囲長,健常群はSMI,歩行速度も評価した。
【結果と考察】
 LSS,LCSの平均±S.Dは,健常群で10.1±2.9N,9.2±4.3N,嚥下機能低下群で7.5±4.2N,6.6±5.1Nで,LSSとLCSに相関関係(健常群:r=0.58, p=0.03,嚥下機能低下群:r=0.60, p=0.001)を認めた。回帰式は健常群:LSS=0.40×LCS+7.0,嚥下機能低下群:LSS=0.53×LCS+4.0で,LSSが高値の者がやや多かった。健常群では,LSS,LCSはSMI,握力と有意に相関し,舌圧はLCSのみと有意な相関を認めた。嚥下機能低下群では,LSS,LCSは舌圧,ODと有意に相関し,握力はLCSのみと有意な相関を認め,サルコペニアを有する群ではLCSが有意に低下していた。
 以上よりLSS,LCSは健常成人では全身の筋量や筋力と関連し,口腔領域のサルコペニアの評価に有用となる可能性が示唆された。一方,口輪筋,頬筋,オトガイ筋等複数の筋力が反映されるとされるLCSの低下は,サルコペニアの嚥下機能低下の一因であると推測された。
(COI開示なし,東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会 承認番号I20-54)