The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演10] 口腔機能4

一般口演10 口腔機能4

Sun. Jun 12, 2022 2:45 PM - 3:25 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:津賀 一弘(広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

[O10-02] 頭部単純CT所見と咳テストの関連性

○村瀬 玲奈、中根 綾子、原 良子、中川 量晴、山口 浩平、吉見 佳那子、戸原 玄 (東京医科歯科大学歯学部大学院摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
咳テストは、クエン酸水溶液の吸入により咳反射の有無を評価する検査で、精度の高い不顕性誤嚥(Silent Aspiration, 以下SA)のスクリーニングテストである。咳テストは疾患を問わずSAの検出に優れており、誤嚥を認める患者にはクエン酸の曝露時間がより短くてもSAの検出に有効である。
一般的に咳反射は、大脳基底核部に脳障害があるとドーパミン合成能が低下し、咽頭と気管の反射を制御するサブスタンスPの合成能が低下するため減弱すると言われているが、咳テストと頭部画像所見との関連性についての報告はない。そこで今回は咳テストと頭部単純CT所見を比較し、関連性を後方視的に探索した。
【方法】
本研究は後ろ向き観察研究であり、I総合病院において2019年1月から12月までに、頭部単純CT撮影と咳テストを同時期に実施した65歳以上の女性患者108名を対象とした。頭部単純CT所見と咳テストの結果をカイ二乗検定およびロジスティック回帰分析を用いて統計学的検討を行った。咳反射に影響のある薬剤服用者は除外した。
【結果と考察】
対象者108人の平均年齢は88.2±6.4歳、咳テスト陽性17人、 陰性91人だった。頭部単純CT所見では、異常あり所見群73人(脳梗塞42人、脳出血4人、慢性虚血性変化67人、低吸収73人:複数所見あり)、異常なし所見群35人であった。カイ二乗検定において、咳テストの結果と頭部CT所見の低吸収域において有意差を認めた。 (p=0.011) また、二項ロジスティック回帰分析において、頭部CT所見の低吸収域の存在が咳テストに影響を及ぼすことが明らかとなった。(p=0.020) 頭部CT所見における低吸収域は加齢変化の他、脳梗塞・脳腫瘍等、浮腫性の病変の存在を示しており、咳テストの結果と何らかの脳疾患の関連性が示唆された。一方、頭部CT所見のみで病変の特定は不可能であるため、今後研究の精度を上げる目的でMRIを用いた後続研究が必要である。

COI開示:なし
東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会
倫理承認番号D2020-060