一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演10 口腔機能4

2022年6月12日(日) 14:45 〜 15:25 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:津賀 一弘(広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

[O10-03] 口腔乾燥症用義歯安定剤が実験用口蓋床の維持力に及ぼす影響

○山根 邦仁、佐藤 裕二、古屋 純一、下平 修、七田 俊晴、北川 昇、池村 直也、角田 拓哉 (昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【目的】
 高齢化率の上昇に伴い,口腔乾燥症を有する義歯装着患者は増加傾向にある。このような患者では義歯の維持力を得るために義歯安定剤を使用することが多い。しかし,義歯安定剤の中には口腔粘膜や義歯からの除去が困難なものがあり,口腔内細菌の増殖要因となる。近年,清掃性が高く保湿成分を含んだ,口腔乾燥症用義歯安定剤(ジェルタイプ)が開発された。我々は,模型上で口腔乾燥症用義歯安定剤が義歯の維持力に及ぼす影響を評価し,良好な結果を得た。しかし,口腔内で口腔乾燥症用義歯安定剤の維持力を比較した報告はない。そこで本研究では,まずは有歯顎者を対象として,口腔乾燥症用義歯安定剤,その他の義歯安定剤,口腔保湿剤を用いた場合の実験用口蓋床の維持力を比較,検討することを目的とした。
【方法】
 健常有歯顎者3名を対象とし,熱可塑性レジンシートを用いて口蓋床を製作した。口蓋床中央にリング状の牽引用装置を付与した。被験試料として,口腔乾燥症用義歯安定剤,義歯安定剤(クリームタイプ)、口腔保湿剤, 義歯用保湿剤の4種類を用いた。試料を口蓋床に塗布し,30分間10分おきに口腔内へ圧接,牽引することで維持力を測定した。試料4種類に試料を塗布しないコントロールを加えた5つの条件で測定を行った。測定後,被験者に口蓋床を水洗させ,清掃性や味などに関してVASにて評価した。
【結果と考察】
 義歯安定剤(クリームタイプ)は経時的に維持力が上昇した。義歯安定剤(クリームタイプ)は他の試料と比べて高い維持力を発揮する一方,口腔粘膜や口蓋床に付着した試料の除去は容易ではない。清掃の難しさは手指の細かい動きができない高齢患者にとって欠点となる可能性がある。口腔乾燥症用義歯安定剤は清掃性が非常に良い結果となった。また装着直後で最も高い維持力を示した。10分以降は義歯安定剤(クリームタイプ)より維持力は低くなったが,30分間はコントロールより高い維持力を示した。口腔保湿剤と義歯用保湿剤は維持力が低く,10分後にはコントロールと同等であった。以上の結果から口腔内においても口腔乾燥症用義歯安定剤(ジェルタイプ)は短時間,義歯安定剤(クリームタイプ)よりも高い維持力を生じ、30分間は維持力を上昇させることが示された。
(COI開示:なし)
(昭和大学歯科病院臨床試験審査委員会承認番号:SUDH0065)