[O11-01] 口腔機能低下は高齢者の咀嚼時間を延長する
【目的】
口腔機能の低下は高齢者の健康維持に大きく影響する。しかし口腔機能低下は見逃されやすく,自覚のないまま進行することが多い。我々は高齢者が歯科受診するきっかけとして食事時間に注目した。食事にかける時間が長くなることは口腔機能低下のサインと考えられる。本研究では,口腔機能低下症の高齢者は,口腔機能低下症でない高齢者と比較して咀嚼時間が延長するのか,また咀嚼時間の延長に影響を与える口腔機能は何かを明らかにすることを目的とした。
【方法】
神経疾患,顎関節の異常,摂食障害を認めない65歳以上の東京歯科大学水道橋病院補綴科受診高齢者77名を対象に,5gの米飯の咀嚼開始から最終嚥下までに要した時間(咀嚼時間)を計測した。また,口腔機能低下症診断のための7つの検査(口腔衛生状態,口腔粘膜湿潤度,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を実施し,3項目以上該当する者を口腔機能低下症該当群,2項目以下の者を非該当群とした。2群間における咀嚼時間をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。続いて,咀嚼時間を従属変数,口腔機能低下症の検査項目のうち運動機能評価としての4項目(咬合力,舌口唇運動機能/ta/,舌圧,咀嚼機能)および年齢,性別を独立変数とした線形重回帰分析を行い,咀嚼時間に関連する因子を検討した。
【結果と考察】
口腔機能低下症該当群は54名,非該当群は23名であった。咀嚼時間(中央値,範囲)は,該当群30.9秒(11.8-72.0秒),非該当群21.0秒(12.2-62.0秒)であり,2群間に有意差を認めた(p=0.036)。また,線形重回帰分析の結果,年齢,咬合力,舌口唇運動機能が説明因子として抽出された。
口腔機能低下症の高齢者は,咀嚼時間が延長していることが明らかとなった。また,年齢以外に咬合力と舌口唇運動機能が咀嚼時間と関連していた。本研究では米飯を噛み始めてから嚥下までにかかる時間を計測しており, 食塊形成や送り込みに関連する舌口唇運動機能が咀嚼時間に関係していたことから,舌の巧緻性も咀嚼に重要であることが示唆された。
本結果より,口腔機能低下は咀嚼時間を延長することが明らかとなった。また,咀嚼時間に対し,年齢,咬合力,舌口唇運動が関連することが明らかとなった。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号#683)
口腔機能の低下は高齢者の健康維持に大きく影響する。しかし口腔機能低下は見逃されやすく,自覚のないまま進行することが多い。我々は高齢者が歯科受診するきっかけとして食事時間に注目した。食事にかける時間が長くなることは口腔機能低下のサインと考えられる。本研究では,口腔機能低下症の高齢者は,口腔機能低下症でない高齢者と比較して咀嚼時間が延長するのか,また咀嚼時間の延長に影響を与える口腔機能は何かを明らかにすることを目的とした。
【方法】
神経疾患,顎関節の異常,摂食障害を認めない65歳以上の東京歯科大学水道橋病院補綴科受診高齢者77名を対象に,5gの米飯の咀嚼開始から最終嚥下までに要した時間(咀嚼時間)を計測した。また,口腔機能低下症診断のための7つの検査(口腔衛生状態,口腔粘膜湿潤度,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を実施し,3項目以上該当する者を口腔機能低下症該当群,2項目以下の者を非該当群とした。2群間における咀嚼時間をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。続いて,咀嚼時間を従属変数,口腔機能低下症の検査項目のうち運動機能評価としての4項目(咬合力,舌口唇運動機能/ta/,舌圧,咀嚼機能)および年齢,性別を独立変数とした線形重回帰分析を行い,咀嚼時間に関連する因子を検討した。
【結果と考察】
口腔機能低下症該当群は54名,非該当群は23名であった。咀嚼時間(中央値,範囲)は,該当群30.9秒(11.8-72.0秒),非該当群21.0秒(12.2-62.0秒)であり,2群間に有意差を認めた(p=0.036)。また,線形重回帰分析の結果,年齢,咬合力,舌口唇運動機能が説明因子として抽出された。
口腔機能低下症の高齢者は,咀嚼時間が延長していることが明らかとなった。また,年齢以外に咬合力と舌口唇運動機能が咀嚼時間と関連していた。本研究では米飯を噛み始めてから嚥下までにかかる時間を計測しており, 食塊形成や送り込みに関連する舌口唇運動機能が咀嚼時間に関係していたことから,舌の巧緻性も咀嚼に重要であることが示唆された。
本結果より,口腔機能低下は咀嚼時間を延長することが明らかとなった。また,咀嚼時間に対し,年齢,咬合力,舌口唇運動が関連することが明らかとなった。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号#683)