[O11-02] 顎運動モーションキャプチャを用いた咀嚼能力評価法
【目的】
我が国は超高齢社会への一途を辿ると同時に,介護を必要とする高齢者も増加している。日常的な食事時の様子をカメラで撮影することで咀嚼能力を評価し,食形態の決定を行うことができれば,昨今の介護現場に寄与できると考える。そこで咀嚼時の顎運動をモーションキャプチャ分析による咀嚼能力の評価法を検討した。
【方法】
咀嚼に異常の訴えがない健常成人32名(男性16名,女性16名,平均年齢25.0±2.8歳)を対象にグミゼリーを20秒間自由に咀嚼させ,咀嚼能力の評価としてグルコース溶出量を測定した。同時に,被験者の顔面にマーカーとなるシールを貼付し咀嚼中の顎運動の様子をハイスピードカメラで撮影し,その運動について分析した。顎運動の1周期を,閉口期,移行期,開口期に分類した。顎運動の1周期の時間や,各期の移動距離,速度,また1周期に占める各期の時間の割合について分析し,咀嚼能率との相関を解析した。
【結果と考察】
咀嚼能率と顎運動の1周期の時間,各期の移動距離,速度との間には有意な相関を認めなかった。咀嚼能率と1周期に占める開口期の時間の割合との間に有意な負の相関(r=-0.59 p<0.001),移行期の時間の割合との間には有意な正の相関(r=0.51 p<0.001)を認めた。閉口期の時間の割合との間には有意な相関がなかった。本研究では開閉口の距離や速度,咀嚼回数の代理指標である1周期の時間といったパラメータと,咀嚼能率との間で相関を認めなかった。一方,咀嚼能率と開口期時間の割合との間に負の相関,移行期の時間の割合との間には正の相関を認めた。開口期は,次の咀嚼のための準備期間と言える。準備のための時間を短くすることで,より食品粉砕にかける時間の割合が増え咀嚼能力が高くなると考えられる。しかし,閉口期の時間の割合だけに着目すると, 相関がなかった。一方,移行期の時間の割合との間には正の相関を認めた。移行期は閉口してから開口するまでの期間で,実際に対合歯同士が咬合し,食品が粉砕されている期間であると考えられる。そのため,移行期にかける時間割合が多くなると,食品粉砕にかける時間が多くなり,結果として咀嚼能率が高くなると考えられた。顎運動のモーションキャプチャを用いることで,咀嚼能力を予測できる可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(大阪歯科大学 医の倫理委員会承認番号 110979)
我が国は超高齢社会への一途を辿ると同時に,介護を必要とする高齢者も増加している。日常的な食事時の様子をカメラで撮影することで咀嚼能力を評価し,食形態の決定を行うことができれば,昨今の介護現場に寄与できると考える。そこで咀嚼時の顎運動をモーションキャプチャ分析による咀嚼能力の評価法を検討した。
【方法】
咀嚼に異常の訴えがない健常成人32名(男性16名,女性16名,平均年齢25.0±2.8歳)を対象にグミゼリーを20秒間自由に咀嚼させ,咀嚼能力の評価としてグルコース溶出量を測定した。同時に,被験者の顔面にマーカーとなるシールを貼付し咀嚼中の顎運動の様子をハイスピードカメラで撮影し,その運動について分析した。顎運動の1周期を,閉口期,移行期,開口期に分類した。顎運動の1周期の時間や,各期の移動距離,速度,また1周期に占める各期の時間の割合について分析し,咀嚼能率との相関を解析した。
【結果と考察】
咀嚼能率と顎運動の1周期の時間,各期の移動距離,速度との間には有意な相関を認めなかった。咀嚼能率と1周期に占める開口期の時間の割合との間に有意な負の相関(r=-0.59 p<0.001),移行期の時間の割合との間には有意な正の相関(r=0.51 p<0.001)を認めた。閉口期の時間の割合との間には有意な相関がなかった。本研究では開閉口の距離や速度,咀嚼回数の代理指標である1周期の時間といったパラメータと,咀嚼能率との間で相関を認めなかった。一方,咀嚼能率と開口期時間の割合との間に負の相関,移行期の時間の割合との間には正の相関を認めた。開口期は,次の咀嚼のための準備期間と言える。準備のための時間を短くすることで,より食品粉砕にかける時間の割合が増え咀嚼能力が高くなると考えられる。しかし,閉口期の時間の割合だけに着目すると, 相関がなかった。一方,移行期の時間の割合との間には正の相関を認めた。移行期は閉口してから開口するまでの期間で,実際に対合歯同士が咬合し,食品が粉砕されている期間であると考えられる。そのため,移行期にかける時間割合が多くなると,食品粉砕にかける時間が多くなり,結果として咀嚼能率が高くなると考えられた。顎運動のモーションキャプチャを用いることで,咀嚼能力を予測できる可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(大阪歯科大学 医の倫理委員会承認番号 110979)