The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演11 口腔機能5

Sun. Jun 12, 2022 3:30 PM - 4:00 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:皆木 省吾(岡山大学 学術研究院医歯薬学域口腔・顎・顔面機能再生制御学講座 咬合・有床義歯補綴学分野)

[O11-03] 唾液分泌抑制がもたらす固形食品摂取時の咀嚼嚥下運動への影響

○落合 勇人1、小貫 和佳奈1、髙田 夏佳2、伊藤 加代子1、真柄 仁1、辻村 恭憲1、井上 誠1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 一正蒲鉾株式会社 技術研究部技術研究課)

【目的】
 食塊形成は咀嚼運動による食物粉砕と共に,巧緻な口腔運動により唾液と混和されることで行われ,嚥下に至る.そのため,唾液分泌の減少は咀嚼嚥下運動に影響を与えうるが,詳細な検討はなされておらず,食品物性等による影響も明らかではない.本研究では,唾液分泌抑制がもたらす摂食嚥下運動への影響を検討するため,唾液分泌抑制下での咀嚼嚥下時の官能評価及び生体記録を行った.
【方法】
 被験者;健常若年成人21名(男性12名,女性9名)を対象とした.被検食;かまぼこ,伊達巻,スナック菓子(一正蒲鉾株式会社)および米飯(サトウ食品株式会社)(各7g)を使用し,自由摂取時の咬筋,舌骨上下筋表面筋電図記録ならびに嚥下内視鏡記録を硫酸アトロピン1mg(富士フィルム和光純薬株式会社)内服前と内服40分後に行った.唾液分泌量はワッテ法を用いて内服前及び内服後10分おきに測定した。解析;被検食摂取時の総摂取時間,初回嚥下までの咀嚼時間,咀嚼回数,咀嚼速度を内服前後で比較した.また咀嚼時筋活動として咀嚼開始から初回嚥下までの咀嚼サイクルを初/中/後期に分類し,各期の1咀嚼サイクルあたりの咬筋及び舌骨上筋活動の積分値を算出し,嚥下時筋活動として舌骨上下筋の持続時間,最大振幅,積分値を解析した.また, VASによる食べやすさについての官能評価を実施した.
【結果と考察】
 内服40分後より唾液分泌量は有意に低下した.かまぼこは,総摂取時間の延長を認めたが,咀嚼時間に変化は認めなかった.スナック菓子及び伊達巻では,総摂取時間と咀嚼時間の延長を認めた.米飯では咀嚼時間は延長し,咀嚼速度は低下を認めた.いずれの食品も咀嚼回数は有意に増加した.咬筋,舌骨上筋群活動はスナックで咀嚼中期に比し前期で持続時間の延長を認めたが,いずれも1咀嚼サイクルあたりの筋活動に影響は認められなかった.嚥下時筋活動は,伊達巻とスナックでは舌骨上筋群の最大振幅が有意に増加し,スナックと米飯では積分値の上昇を認めたが,かまぼこでは差を認めなかった.舌骨下筋群はいずれの被検食においても有意差は認められなかった.官能評価では,かまぼこのみが,噛みやすさに低下をきたさなかった.かまぼこは,唾液分泌抑制下においても,咀嚼嚥下運動や主観的な食べやすさは影響を受けにくいことが示唆された.
 COI開示:なし.新潟大学倫理審査委員会承認番号2020‐0125.