一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演2 全身管理・全身疾患

2022年6月11日(土) 10:00 〜 11:00 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:柏﨑 晴彦(九州大学大学院歯学研究院  口腔顎顔面病態学講座 高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

[O2-05] パーキンソン病が口腔衛生管理に及ぼす影響について

○梅田 愛里1、溝江 千花1、岩下 由樹2、芥川 礼奈2、道津 友里子2、梅本 丈二2 (1. 福岡大学病院 歯科口腔外科、2. 福岡大学病院 摂食嚥下センター)

【目的】
 パーキンソン病(PD)は進行とともに運動機能や上肢機能が低下し、口腔衛生管理が疎かになることが少なくない。PD患者の死因の上位は誤嚥性肺炎であり、口腔健康管理が重要である。しかし、症状の進行とともに動作緩慢、無動となり口腔健康管理が難しくなる、服用薬の影響で唾液分泌が低下する、口腔乾燥や自浄作用の低下によりう蝕が多発することもある。そこで本研究ではPDが口腔衛生管理に及ぼす影響について検討する。
【方法】
 当院脳神経内科にて2021年10月から2022年1月まで入院したPD患者23人(男性9人、女性14人、平均年齢63.3±9.5歳)を対象に歯磨き回数、使用歯ブラシ、残存歯数、OHAT-J(Oral Health Assessment Tool)などの調査を実施した。また診療録より発症年齢、罹病期間、Hoehn & Yahrの重症度分類、運動機能(MDS-UPDRS Part3, Movement Disorder Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale)、上肢機能(STEFF, Simple Test for Evaluating Hand Function)、認知機能(MMSE, Mini Mental State Examination)、L-ドパ換算用量相当量(LEDD, Levodopa equivalent daily dose)の各データを抽出し、口腔内の状況との関連性を検討した。
【結果と考察】
 罹病期間(平均11.7±4.2年)とOHAT-Jスコア(平均4.6±2.9)に有意な相関関係が認められた(R=0.597, p<0.005)。罹病期間が長くなるほど口腔衛生状態が悪化することが示唆された。また、年齢とSTEFFスコア(平均84.3±14.5)に有意な相関関係が認められ(R=0.496,p<0.05)、加齢とともに上肢機能が低下することが示唆された。その一方で、他の項目とOHAT-Jとの関連性は認められなかった。またOHAT-Jの項目では歯肉・粘膜の不良が14人、唾液の不良が15人と半数を占めた。以上の結果より、罹病期間が長いPD患者ほど、口腔衛生管理が重要となり上肢機能低下を考慮した家族、医療・介護従事者への口腔衛生指導が重要と考えられた。
                                        (COI開示:なし)
                      (福岡大学病院倫理審査委員会承認番号H-21-09-006)