[O2-06] コロナ禍での歯科介入頻度の変化が施設入居者の病院搬送件数に及ぼす影響
【目的】
口腔健康管理は高齢な施設入居者の誤嚥性肺炎等の口腔内細菌に起因する感染症や、オーラスフレイルを経て引き起こされるフレイル・サルコペニアなど様々な健康管理に寄与している。コロナ禍が始まった時期を起点としてその前の1年、その後の1年の歯科介入頻度の状態を比較して、施設入居者の病院搬送件数から歯科介入の影響を後視野的に検討した。
【方法】
2018年12月から2020年11月の2年間である。当院が歯科訪問診療を行っている介護老人福祉施設入居者を対象とし、調査項目は患者構成、歯科の介入回数、コロナ禍前後での診療人数比、ならびに病院搬送事例件数について検討した。
【結果と考察】
75才以上が約90%,男女比が1:3であった。歯科の介入頻度はコロナ禍前が月2回、コロナ禍後は月1回と1/2であった。コロナ禍前後での診療人数の比は最低が0.01であった。病院搬送事例は2群の比較(コロナ禍前 VSコロナ禍後)では誤嚥性肺炎の発生件数が(31 VS 33)であり発生件数の有意な増加はなかった。介入回数がコロナ禍の介入抑制下でも口腔健康管理は継続していたため、明らかな発生件数の増加には結びつかなかったと考えられた。肺炎は(39 VS 17)であった。肺炎発症件数はコロナ禍前後で約1/2に減少した。口腔ケアが関与すると言われている肺炎の発症件数の減少と、口腔衛生管理を担う歯科の介入頻度の減少との関連性は今回の調査結果からは不明であった。脳梗塞は(7 VS 3)で約1/2に減少した。脳梗塞の血栓形成に歯周病菌が関与しており口腔健康管理の介入の減少により発生件数が増加すると考えられたが、今回の調査からはその影響が見られず原因は不明であった。骨折は(15 VS 19)であり、発生件数の有意な増加はなかった。フレイル・サルコペニアが関与する骨折の発症に調査期間中の歯科介入の減少の影響は無かったと考えられた。コロナ禍前後で発生件数の差がなかったあるいは発生件数に有意差があったその他の搬送事例は、口腔健康管理が影響を及ぼす範疇を超えているため歯科の介入減少の影響はなかったと考えられた。以上のことから、歯科の介入頻度の減少が病院搬送件数に影響を及ぼしたといえなかった。
(COI開示:なし)
(承認番号 老年歯科倫理2021-01)
口腔健康管理は高齢な施設入居者の誤嚥性肺炎等の口腔内細菌に起因する感染症や、オーラスフレイルを経て引き起こされるフレイル・サルコペニアなど様々な健康管理に寄与している。コロナ禍が始まった時期を起点としてその前の1年、その後の1年の歯科介入頻度の状態を比較して、施設入居者の病院搬送件数から歯科介入の影響を後視野的に検討した。
【方法】
2018年12月から2020年11月の2年間である。当院が歯科訪問診療を行っている介護老人福祉施設入居者を対象とし、調査項目は患者構成、歯科の介入回数、コロナ禍前後での診療人数比、ならびに病院搬送事例件数について検討した。
【結果と考察】
75才以上が約90%,男女比が1:3であった。歯科の介入頻度はコロナ禍前が月2回、コロナ禍後は月1回と1/2であった。コロナ禍前後での診療人数の比は最低が0.01であった。病院搬送事例は2群の比較(コロナ禍前 VSコロナ禍後)では誤嚥性肺炎の発生件数が(31 VS 33)であり発生件数の有意な増加はなかった。介入回数がコロナ禍の介入抑制下でも口腔健康管理は継続していたため、明らかな発生件数の増加には結びつかなかったと考えられた。肺炎は(39 VS 17)であった。肺炎発症件数はコロナ禍前後で約1/2に減少した。口腔ケアが関与すると言われている肺炎の発症件数の減少と、口腔衛生管理を担う歯科の介入頻度の減少との関連性は今回の調査結果からは不明であった。脳梗塞は(7 VS 3)で約1/2に減少した。脳梗塞の血栓形成に歯周病菌が関与しており口腔健康管理の介入の減少により発生件数が増加すると考えられたが、今回の調査からはその影響が見られず原因は不明であった。骨折は(15 VS 19)であり、発生件数の有意な増加はなかった。フレイル・サルコペニアが関与する骨折の発症に調査期間中の歯科介入の減少の影響は無かったと考えられた。コロナ禍前後で発生件数の差がなかったあるいは発生件数に有意差があったその他の搬送事例は、口腔健康管理が影響を及ぼす範疇を超えているため歯科の介入減少の影響はなかったと考えられた。以上のことから、歯科の介入頻度の減少が病院搬送件数に影響を及ぼしたといえなかった。
(COI開示:なし)
(承認番号 老年歯科倫理2021-01)