The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演3 症例・施設

Sat. Jun 11, 2022 11:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:中島 純子(東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座)

[O3-01] 中咽頭癌術後再発による疼痛に対し下顎孔アプローチによる神経ブロックが効奏した1例

○臼渕 公敏 (宮城県立がんセンター 歯科)

【目的】
中咽頭癌術後再発・下顎骨浸潤・下顎病的骨折に起因した神経因性疼痛に対し、歯科臨床で汎用される下顎孔伝達麻酔を応用した下顎孔アプローチによる下顎神経ブロックにより、疼痛コントロール良好となった症例を経験した。
【症例の概要と経過】
60歳男性 既往歴:高血圧。左中咽頭癌にて2018年9月に左中咽頭側壁切除術、 10月に胃癌切除術施行。その後中咽頭癌局所再発し2019年1月~3月化学放射線治療施行、2019年11月再発し舌喉頭全摘・右頸部郭清・遊離腹直筋皮弁再建実施。
2020年5月局所再発し化学療法開始。2021年4月より4th Line化学療法としてPTX開始。左下顎疼痛著明のため5月2日入院、腫瘍による左下顎骨骨折・骨髄炎発症、化学療法もPDのためBSCに方針変更となった。左下顎の疼痛がモルヒネ換算170mg/日投与されているもののNRS7~8続くため、疼痛コントロール目的に5月7日当院緩和ケア内科紹介。局所治療による疼痛コントロールの精査・加療目的に5月12日当院歯科紹介受診。
同日3%メピバカイン塩酸塩注射液1.8mlにて左下顎孔伝達麻酔実施したところ、疼痛はNRS3程度まで一時的に軽減した。効奏することから5月17日、下顎孔周囲を3%メピバカイン塩酸塩注射液で局所麻酔し無水アルコール0.2ml局注により神経破壊を実施、NRS3まで軽減した。しかし疼痛再増悪したため5月24日再度実施、NRS1~2となったため経過観察としたところ6月3日モルヒネ投与量は150mg/日まで減少した。
8月3日疼痛再増悪の訴え有り(NRS6)再度神経ブロック実施したところNRS3まで改善した。2021年9月6日再診時、モルヒネ投与量は80mg/日まで減少、NRS1まで疼痛緩和した。なお、本報告に際し患者本人からの文章による同意を得ている。
【結果と考察】
神経ブロックは, 薬物療法で十分に管理できない神経障害性疼痛に有効なことがある。頭頸部領域の疼痛に対しては星状神経節ブロックや上顎神経節ブロックがあるが、手技の煩雑さや偶発症のリスク等から実臨床では実施しにくい。本症例では歯科臨床で汎用される下顎孔伝達麻酔の手技を流用しおこなったため比較的容易に実施できる。しかし下顎神経と並走する舌神経も破壊する恐れがあるため本症例のような舌全摘などの症例に限定されると考える。(COI開示なし 倫理審査対象外)