The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演3] 症例・施設

一般口演3 症例・施設

Sat. Jun 11, 2022 11:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:中島 純子(東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座)

[O3-02] 上顎総義歯の新製後に口蓋に生じた乳頭状唾液腺腺腫の1例

○栗原 智尋、加藤 禎彬、星野 照秀、片倉 朗 (東京歯科大学 口腔病態外科学講座)

【緒言】
乳頭状唾液腺腺腫は, 2017年WHO分類で導管乳頭腫から独立した唾液腺良性上皮性腫瘍として分類され, 比較的稀な疾患である。今回, 上顎総義歯新製後に義歯床縁に生じた腫瘤を切除したところ, 乳頭状唾液腺腺腫の診断を得た症例を経験した。術後経過も良好のため, 概要を報告する。
【症例の概要と処置】
86 歳, 女性。2020年8月に近在の歯科医院で上下顎の総義歯を新製した。適合は良好であったが10月に左側口蓋部に発赤と腫瘤を認め, 11月に精査目的に当科を紹介受診した。既往歴に糖尿病, 骨粗鬆症, 高尿酸血症, 虚血性心疾患があった。初診時の口腔内所見は左側口蓋後方部の義歯床縁部に一致して発赤と易出血性を伴う 5×5 mm 大の弾性軟で乳頭状の腫瘤を認めた。細胞診ではclass Ⅱaの結果であった。また, 疼痛を自覚していなかったこと, 金属床義歯を使用していて調整が困難であったことから当科で3か月に1度の経過観察を行った。その後, 病変の増大傾向を認めたため, 2021年11月に全切除生検を施行した。切除した検体の病理組織学的所見はH-E染色で錯角化重層扁平上皮と腺管構造を伴う導管に類似した円柱上皮の乳頭状の増殖を認めた。腺管は, Oncocytic changeを伴う二層性配列を呈し基底側に立方細胞, 内側に円柱細胞が見られた。特殊染色では, PAS染色で腺管内に粘液様物質が認められた。また, 免疫組織化学的染色では, 両上皮でEMA,Ki67が陽性,重層扁平上皮はCK13,p63で陽性,円柱上皮はCAM5.2,CK7で陽性反応であった。S-100は扁平上皮内のメラニン産生細胞に陽性を示した。 以上の結果より, 乳頭状唾液腺腺腫と診断した。
なお, 本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【結果と考察】
本症例では, 義歯床縁部に一致して発症していて慢性的な刺激がリスク因子となった可能性も考えられるため, 義歯床下粘膜の経時的な観察は, 腫瘍性変化の確認も視野に入れて行うことが必要であると再確認できた。悪性への転化の可能性は低いが, 本症例のように切除が望ましいこともあるため, 紹介歯科医院との連携を取りながら長期的な経過観察を行っていく必要があると考えている。
COIの開示:なし。倫理審査対象外