The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演3 症例・施設

Sat. Jun 11, 2022 11:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:中島 純子(東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座)

[O3-03] 通院困難な高齢患者の筋筋膜痛に対して「医療アプリ」を活用した理学療法が有効であった1例

○中山 詩織、臼田 頌、西山 留美子、中川 種昭、堀江 伸行 (慶應義塾大学病院歯科口腔外科)

【目的】
筋筋膜痛の治療法としてセルフマッサージやセルフストレッチ(以後セルフケア)を中心とした理学療法の有効性が報告されているが,患者の実施率や環境により効果に差が出てしまう問題点が指摘されている.今回われわれは,筋筋膜痛と診断された通院困難な高齢患者に対して,「医療アプリ」を活用することで,良好なセルフケアを家族と連携して指導することができ,治療が奏功した1例を経験したので報告する.
【症例の概要と処置】
89歳,女性.10年前より左側下顎臼歯部疼痛を自覚したが,症状の改善を認めず,当科へ精査依頼となった.
初診時の所見としては左側下顎臼歯部に,疼痛強度NRS 6/10の持続性の鈍痛を認めた.精査の結果,左側咬筋・ 側頭筋に著明な硬結と圧痛と左側下顎臼歯部への関連痛を認め,その痛みはファミリアペインであった.筋筋膜痛の診断下に本人にセルフケアの指導を実施した.
しかし再診時にも左側咬筋・側頭筋の著明な硬結と圧痛は残存しており,左側下顎臼歯部の鈍痛の改善も乏しかった. その原因としては,患者が高齢であるため,セルフケアの部位や方法が間違っており,良好なセルフケアを施行できていなかったことが挙げられた.また,再指導するも老人ホーム入居中で通院回数が制限されてしまうため,セルフケア指導を十分に実施できないことも問題であった.
そこで, 症状の改善にはセルフケアの向上が必須であるという治療方針のもと,患者の環境を考慮して 2週間毎の老人ホームでの家族との面会時に,家族から「医療アプリ」を用いたセルフケアプログラムの指導をお願いした.
【結果と考察】
患者は面会時にアプリ上で再生されるオーダーメイドの動画を視聴しながら適切なセルフケアを確認し,家族に指導されながら老人ホームでも良好にセルフケアを施行することができた.セルフケアの質の向上により左側咬筋・ 側頭筋の著明な硬結と圧痛は改善し,それに伴い主訴であった左側下顎臼歯部の疼痛も消失した.
本症例から「医療アプリ」を用いることで,受診が困難な環境においても質の高いセルフケアを提供できることが示唆された.今後は家族とだけでなく施設との連携等でも活用可能であると思われる.
(COI開示:なし)
(本報告の発表について患者本人から同意を得ている.)
(慶應義塾大学 倫理審査委員会承認番号 2018-0033)