The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演3 症例・施設

Sat. Jun 11, 2022 11:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:中島 純子(東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座)

[O3-05] COVID-19感染後に経口摂取困難となり摂食嚥下リハビリテーションを実施した症例

○石川 唯1、黒田 直希1、佐藤 志穂1、市川 陽子1、北詰 栄里2,3、菊谷 武1,4 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本医科大学武蔵小杉病院 歯科、3. 日本歯科大学附属病院 口腔外科、4. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)

【目的】
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症例の摂食嚥下障害の併発が報告されている。今回,精神科病棟入院患者がCOVID-19に感染後,摂食嚥下障害により経口摂取禁止となった症例に対して,栄養管理を含めた摂食嚥下リハビリテーションを実施することで摂食嚥下機能が回復した一例を経験した。本症例を通じてCOVID-19と摂食機能について考察することとした。
【症例の概要と処置】
 症例は70歳代,女性。4年前より統合失調症で某病院精神科に入院加療中であった。ADLは自立し,食事は常食を摂取していた。初診2か月前にCOVID-19に病棟内で感染し,治療のため転院。新型コロナウイルス感染症重症度分類は中等症2(酸素投与が必要)であり,抗ウィルス剤等の治療を受けた。治療中には摂食機能障害の診断で経管栄養となった。1か月後,COVID-19の症状は軽快し,ウィルス陰性となったため帰院となるもADL,意識レベルの低下がみられ,GCSにてE3V3M5であった。発症時の体重は54.8kgであったが,再入院時には46.9kgと減少していた。嚥下困難,味覚障害の訴えがあり,自発性の低下も認め,経口での栄養摂取が困難と判断され,間歇的食道経管栄養法による栄養摂取となった。嚥下内視鏡検査では咽頭収縮力低下が認められ,鼻咽腔閉鎖不全による鼻咽腔逆流が観察された。そのため看護師や理学療法士が笛を用いたブローイング訓練や舌抵抗訓練を実施した。自発性向上,咽頭収縮力向上,鼻咽腔閉鎖機能の改善に合わせて,摂取量の増加と食形態の向上を認めた。再入院後5か月で完全経口摂取となり,8か月後に常食となった。
 なお,本報告の発表について患者本人から口頭と文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 新型コロナウイルスは神経親和性,神経浸潤性であることが知られている。また,呼吸器症状に加えて,消化器症状を引き起こすことが知られており,栄養障害の原因となる。さらに,cytokine stormと呼ばれる全身の炎症反応は,代謝亢進を促進させ低栄養のリスクが高まることが示されている。本症例は,これらが原因してCOVID-19感染後,嚥下障害を生じたと考えられる。感染による嚥下障害の予防には,感染症治療中の低栄養の予防が重要であり,治療には栄養改善と筋力増強訓練の必要性が考えらえた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)