The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演4 連携医療・地域医療/介護・介護予防

Sat. Jun 11, 2022 2:50 PM - 3:50 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:石田 瞭(東京歯科大学摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[O4-04] 骨吸収抑制薬を使用している離島在住高齢患者の抜歯を離島医師と医科歯科連携した3症例

○寺本 祐二1、久保 桐子1、中井 久2 (1. 寺本歯科医院、2. 中井歯科医院)

【目的】
 これまで離島の老年歯科に関する報告は少なく,島内に歯科がある有人離島は多くない。離島振興法対策実施地域の指定を受けた有人離島254島のうち三重県鳥羽市には4島(坂手島・菅島・答志島・神島)存在しており, その中で3島には歯科が存在しない。さらに高齢化率が70%を超えている島もある。各離島には市立診療所(内科)が存在することから,本土にある歯科の当院はこれまでに離島診療所医師と医科歯科連携を行ってきた。 そこで今回われわれは,骨吸収抑制薬を使用している離島在住高齢患者の抜歯を離島医師と医科歯科連携した症例について報告する。
【症例の概要と処置】
 当院を受診した離島在住の高齢患者3名について報告する。症例1,85歳女性,独居,既往歴:高血圧症,MCI,左大腿脂肪肉腫,骨粗鬆症,虚血性視神経炎。症例2,82歳女性,独居,既往歴:高血圧症,大動脈弁狭窄症,骨粗鬆症。症例3,81歳女性,独居,既往歴:リウマチ,骨粗鬆症,高血圧症。
【結果と考察】
 3名の患者全員,抜歯が必要な状態であった。3名とも全身疾患を有しており担当医師と対診を行った。症例1は骨粗鬆症に対してBP製剤が処方されており,症例2と症例3は同じく骨粗鬆症に対してデノスマブの注射がされていた。いずれの症例も歯周炎が進行しており今後薬剤関連顎骨壊死に重篤化する可能性が高いケースだった。今回報告した3人の患者は現在のところ通院が可能な状況であったので適切な医科歯科連携のもと処置が可能だったが,今後歯科受診が困難になった場合,重篤化して発見される可能性がある。8020運動のおかげで歯が残存する傾向であるが、一方で定期的な歯周管理の必要性が示唆された。本年は離島振興法の改正の年であり,同法四条2項に医療の確保等,高齢者の福祉等が明記されているが,離島というその性質上,地域包括ケアシステムを構築していく中で様々な問題を抱えている。離島に限らず,これから全国各地で人口減少が進み,へき地医療の環境はますます厳しくなることが予想される。そこには問題解決に向けて積極的な行政の介入ならびに官民の連携,多職種連携が求められ,ICTの活用といった早急なネットワークの設立とシステムの構築が必要である。(COI開示:なし,倫理審査対象外、治療はインフォームドコンセントを得て実施し発表についても患者の同意と家族への説明を行った)