一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演4 連携医療・地域医療/介護・介護予防

2022年6月11日(土) 14:50 〜 15:50 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:石田 瞭(東京歯科大学摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[O4-05] 地域在住高齢者における認知機能低下と口腔機能およびソーシャル・キャピタルとの関連

○竹内 倫子1、澤田 ななみ2、鷲尾 憲文3、澤田 弘一4、江國 大輔5、森田 学5 (1. 岡山大学病院歯科・予防歯科部門、2. 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野、3. 鏡野町国民健康保険富歯科診療所、4. 鏡野町国民健康保険上齋原歯科診療所、5. 岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野)

【目的】
わが国では急速な高齢化にともなって地域住民の認知症予防対策に関するニーズが高まっている。認知症に対する有効な治療法はまだ確立されていないため、認知症の発症を予防する手段を模索することが望まれる。 ソーシャル・キャピタル(SC)は,人と人とのつながりや,社会活動への参加などにより得られる資源と定義されている。本研究では、地域在住高齢者において認知機能低下と口腔機能、SCとの間に関連があるか検討した。
【方法】
2018年5月~8月に岡山県北部在住の高齢者で、本研究に同意を得られた73人(男性24人、女性49人、平均年齢80.0±10.6歳)を分析対象とした。評価項目は、基本チェックリスト(運動機能、低栄養、口腔機能、認知機能、 閉じこもり傾向、うつ傾向)、世帯構成、学歴、飲酒・喫煙歴、口腔機能(舌圧、オーラルディアドコキネシス(ODK))、口腔状態(現在歯数、機能歯数、可撤性義歯使用の有無)、食事時の主観的咀嚼状態および早食いの状態とした。SCは井上らの指標(農村SC)を用いた。認知機能低下の判定には基本チェックリストの認知機能項目を用いた。認知機能低下有無を従属変数とし、独立変数を基本チェックリストの認知機能以外の項目、口腔機能、口腔状態として、二項ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
【結果と考察】
認知機能が低下している者は46人であった。認知機能低下の有無と関連がみられた項目は、年齢、飲酒歴、閉じこもり傾向、うつ傾向、農村SC、舌圧、ODK、現在歯数、機能歯数、可撤性義歯使用の有無であった。二項ロジスティック回帰分析の結果、認知機能低下と有意な関連がみられたのは、うつ傾向(オッズ比6.392、 95%CI:1.208-33.821)、ODK/ta/(オッズ比1.508, 95%CI:1.040-2.186)、農村SC(オッズ比1.079, 95%CI:1.001-1.164)であった。
ODKが認知機能に関連するメカニズムは不明であるが、ODKは咀嚼能力や栄養摂取を通じて認知機能と関連した可能性がある。また、農村SC低下やうつ傾向は、社会参加を妨げ、脳機能の活性化に影響した可能性もある。地域在住高齢者において、認知機能低下の有無に有意な関連がみられたのはうつ傾向、ODK/ta/、農村SCであった。(COI開示:なし)(岡山大学倫理審査委員会承認番号1708-028)