一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演4 連携医療・地域医療/介護・介護予防

2022年6月11日(土) 14:50 〜 15:50 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:石田 瞭(東京歯科大学摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[O4-06] 経口維持加算算定対象者のMNA®-SFによる栄養評価と口腔状態,摂食嚥下機能との関連性

○西岡 愛梨 (大阪市立大学大学院 生活科学研究科)

【目的】
 介護保険施設では食事の経口摂取を維持するために特別な管理が必要である者を対象に,多職種連携で食支援を実施し,経口維持加算を算定できる。本研究では算定対象者の栄養状態と口腔状態,摂食嚥下機能との関連性を解析した。
【方法】
 対象は介護老人保健施設でH28年7月~H29 年7月に経口維持加算を算定した計198名で,調査項目は高齢者に特化した栄養評価法である簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)の他,口腔状態・摂食嚥下機能(経口維持加算の食事観察項目),改訂水飲みテスト(MWST),併存疾患,食事内容とした。統計処理は SPSS Ver.26でχ2検定,Fisher の正確確率検定,Mann-WhitneyのU検定を行い,p<0.05を統計的有意とした。
【結果と考察】
 MNA®-SF による栄養状態良好は2名,At riskは98名,低栄養は98名であった。栄養状態良好&At risk群と低栄養群で比較すると,MWST3点以下の嚥下障害の割合や,嚥下障害者用の食種である嚥下調整食コード2の食事を提供されている割合が,低栄養群の方が有意に高かった(p<0.01)。口腔状態・摂食嚥下機能で低栄養群の方が有意に割合が高かった項目は「食事介助が必要(p<0.01)」「食事を楽しみにしていない(p<0.05)」「食事をしながら寝てしまう(p<0.05)」「食事に集中できない(p<0.05)」「食事を拒否する(p<0.05)」「食事に時間がかかり疲労する(p<0.01)」「口腔内に食物残渣が目立つ(p<0.01)」「嚥下に時間がかかる(p<0.01)」「一口あたり何度も嚥下する(p<0.05)」「頻繁にむせたり,せきこんだりする(p<0.05)」であった。口腔内の衛生状態,歯や義歯の有無等の項目には有意差が見られなかった。
 施設入所高齢者の口腔状態においては,専門職主導で口腔健康管理や栄養管理(食形態の調整など)を実施することで,経口摂取維持のための一定の対処が可能であるのに対し,摂食嚥下機能の改善には限界があるため,低栄養に関連し易いと推測された。在宅高齢者における口腔状態不良は低栄養のリスク要因だが,本研究の対象者においては,歯科医や管理栄養士等の多職種介入でリスクを軽減出来ている可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 研究倫理委員会承認番号 17-42)