[O6-03] 健常高齢者の水嚥下時舌運動
【目的】
舌は咀嚼・嚥下・構音において重要な役割を担っているが,口腔内にあるため直接運動する様子を観察することはできない。我々はこれまでにモーションキャプチャを用いて健常若年者の水嚥下時舌運動と舌圧発現を計測し, 矢状面運動軌跡の共通パターンとして7つのタイムイベント(以下TE)が存在することを明らかにした。今回はこの方法を用いて高齢者の水嚥下時舌運動を解析し,若年者と比較したので報告する。
【方法】
被験者は65歳以上の健常高齢者5名(男性1名,女性4名,平均年齢71.0±4.7歳)とした。舌運動計測には,舌前方と後方にセンサを取り付けた舌のモーションキャプチャシステム (電磁アーティキュログラフ,Carstens社) を用いた。舌圧計測には5か所に感圧点を持ち嚥下機能を妨げることなくリアルタイムで測定可能な舌圧センサシートシステムを用い,同期計測を行った。被験試料は3mlの水とし,被験者に口腔底部に注入した試料を嚥下させた。得られた舌運動波形からTEを同定し,以前に計測した健常若年者16名(男性12名,女性4名,平均年齢29.5±3.8歳)の波形と比較した。
【結果と考察】
いずれの被験者も若年者と同様の矢状面運動パターンを示した一方で,試行によっては口腔底から水を舌上にすくい上げる動作と考えられているTE1,2,3(嚥下準備期)の運動量が非常に小さかった。また,水を口腔から咽頭へ送り込む動作と考えられているTE3,4,5(嚥下口腔期)に関わる舌運動時間が長かった。さらに,口蓋に接触してから舌圧発現し嚥下が完了するまでの動作であるTE5,6,7(嚥下咽頭期)が延長している被験者も見られた。今回の舌運動の定性的な観察から,基本的には若年者と同じような運動パターンを示すが,嚥下口腔期・咽頭期に関わる食塊輸送の運動が不明瞭かつ緩慢である様子が見られた。今回の被験者は口腔機能低下症非該当の比較的健康な高齢者であったが,口腔機能の低下が認められる高齢者では今回見られた特徴がより顕著になるのではないかと予想される。被検者にばらつきが大きかったため定量的な評価には至らなかったが,今後は被験者を増やして舌運動・舌圧発現の関係を定量的に分析し,明らかにしていきたい。
COI開示なし
新潟大学倫理委員会承認2015-3050
謝辞:実験に多大に貢献された設楽仁子先生に感謝申し上げます。
舌は咀嚼・嚥下・構音において重要な役割を担っているが,口腔内にあるため直接運動する様子を観察することはできない。我々はこれまでにモーションキャプチャを用いて健常若年者の水嚥下時舌運動と舌圧発現を計測し, 矢状面運動軌跡の共通パターンとして7つのタイムイベント(以下TE)が存在することを明らかにした。今回はこの方法を用いて高齢者の水嚥下時舌運動を解析し,若年者と比較したので報告する。
【方法】
被験者は65歳以上の健常高齢者5名(男性1名,女性4名,平均年齢71.0±4.7歳)とした。舌運動計測には,舌前方と後方にセンサを取り付けた舌のモーションキャプチャシステム (電磁アーティキュログラフ,Carstens社) を用いた。舌圧計測には5か所に感圧点を持ち嚥下機能を妨げることなくリアルタイムで測定可能な舌圧センサシートシステムを用い,同期計測を行った。被験試料は3mlの水とし,被験者に口腔底部に注入した試料を嚥下させた。得られた舌運動波形からTEを同定し,以前に計測した健常若年者16名(男性12名,女性4名,平均年齢29.5±3.8歳)の波形と比較した。
【結果と考察】
いずれの被験者も若年者と同様の矢状面運動パターンを示した一方で,試行によっては口腔底から水を舌上にすくい上げる動作と考えられているTE1,2,3(嚥下準備期)の運動量が非常に小さかった。また,水を口腔から咽頭へ送り込む動作と考えられているTE3,4,5(嚥下口腔期)に関わる舌運動時間が長かった。さらに,口蓋に接触してから舌圧発現し嚥下が完了するまでの動作であるTE5,6,7(嚥下咽頭期)が延長している被験者も見られた。今回の舌運動の定性的な観察から,基本的には若年者と同じような運動パターンを示すが,嚥下口腔期・咽頭期に関わる食塊輸送の運動が不明瞭かつ緩慢である様子が見られた。今回の被験者は口腔機能低下症非該当の比較的健康な高齢者であったが,口腔機能の低下が認められる高齢者では今回見られた特徴がより顕著になるのではないかと予想される。被検者にばらつきが大きかったため定量的な評価には至らなかったが,今後は被験者を増やして舌運動・舌圧発現の関係を定量的に分析し,明らかにしていきたい。
COI開示なし
新潟大学倫理委員会承認2015-3050
謝辞:実験に多大に貢献された設楽仁子先生に感謝申し上げます。