The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演7 口腔機能1

Sun. Jun 12, 2022 9:00 AM - 9:30 AM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:吉川 峰加(広島大学大学院医系科学研究科 先端歯科補綴学)

[O7-01] 新型コロナウイルス感染症の蔓延が舌口唇運動機能に及ぼす影響-コロナ前後における比較について-

○内田 淑喜、佐藤 裕二、古屋 純一、七田 俊晴、大澤 淡紅子、畑中 幸子、平良 仁美、田上 理沙子 (昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【目的】
新型コロナウイルス感染症(コロナ)の蔓延により,多くの方が自粛生活を強いられ,コミュニケーション低下が危惧される。滑舌が悪くなった報告もあるが,統計的に明らかでない。
そこで,コロナ前後での舌口唇運動機能(滑舌)の変化を調査した。
【方法】
被験者はコロナ前(2019年4月1日~2020年3月31日),後(2020年7月1日~2021年8月31日)の間で,当科外来を受診したデータの欠落のない患者196名で,口腔機能低下症の初回検査を行った患者とした。
年齢,性別,パタカ10回法による滑舌の評価を集計した。性差にはt検定を行い,年齢とパタカ10回法の関係は相関分析を行った。80歳未満と80歳以上に群分けし,パタカ10回法の結果をコロナ前後でt検定を用いて比較した1)
【結果と考察】
コロナ前の146名の平均年齢は78.7歳,男性60名,女性86名であった。コロナ後の50名の平均年齢は80.1歳,男性20名,女性30名であった。コロナ前後で性別と年齢に有意差は認められなかった。
コロナ前後のパタカ10回法の結果は4.9秒,5.4秒とコロナ前に比べて,コロナ後は有意な滑舌低下が示された(p<0.05)。男女におけるコロナ前後のパタカ10回法では,有意差は認められなかった。
年齢とパタカ10回法を基に,コロナ前後の相関を求めると,コロナ前0.15(p=0.07),後0.60(p<0.01)であり, コロナ後では有意な相関が得られた。コロナ前では相関がないことからパタカ10回法は年齢に左右されず,コロナ後で相関が得られたことは,80歳以上の高齢者の行動制限により起こった滑舌低下での分布の変化が示唆された。
80歳未満のコロナ前後のパタカ10回法の結果は4.8秒,4.6秒であり,有意差は認めなかったが,80歳以上のコロナ前後のパタカ10回法の結果は5.1秒,5.9秒であり,有意にコロナ後の方が大きかった(p<0.01)。高齢者の行動制限による可能性が示唆された。
今後,滑舌がコロナの影響で低下している可能性も視野に入れ,口腔機能低下の検査・管理を行う必要があると考えられる。
1)佐藤ら.オーラルディアドコキネシスを利用した舌口唇運動機能障害の自己評価表の提案,老年歯科医学33:448-454,2019. (COI開示:なし)(昭和大学歯科病院臨床試験審査委員会承認番号DH2018-032)