一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演7 口腔機能1

2022年6月12日(日) 09:00 〜 09:30 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:吉川 峰加(広島大学大学院医系科学研究科 先端歯科補綴学)

[O7-02] 口腔機能と歯周病菌PCR検査の関連

○内堀 典保、椙村 豊彦、渡邊 俊之、浅井 章夫、山中 一男、中村 剛久、竹内 克豊、森 幹太、加藤 正美、中根 敏盛、岡井 誠、真田 裕三、冨田 健嗣、外山 敦史、武藤 直広 (一般社団法人愛知県歯科医師会)

【目的】
 口腔機能の低下は,口腔内の自浄作用の低下から歯周病の進行を助長し,歯周病の進行は,咬合力や咀嚼機能などの口腔機能を低下させ,それぞれ相互の関係があると考えられる。しかし,口腔機能と歯周病の関連についてはあまり明らかになっていない。本報告は,口腔機能と歯周病の原因菌の1つであるPorphyromonas gingivalis(以下P.g.菌)の菌数の関連を知ることを目的とした。
【方法】
 愛知県知多郡東浦町の40~87歳の地域住民273名(男性113名,女性160名)を対象に,口腔機能検査を実施するとともに,PCR法を用いた口腔細菌検出装置orcoaを使用し,歯間部のP.g.菌数を測定した。
【結果と考察】
 P.g.菌数は年齢とともに増加する傾向がみられたが,男女の間に有意な差は認められなかった。P.g.菌数と各口腔機能測定値との相関をみると,細菌カウンタ測定値とr=0.12 (p<0.05) の正の相関が,オーラルディアドコキネシス測定値とはr=-0.21 (p<0.001) の負の相関が,また舌圧測定値とr=-0.12 (p<0.05) の負の相関がみられた。㈱オルコアの判定基準に準じ,さらに受診者に分かりやすい表現として,測定値が0~999までの場合は菌数が「なし」,1000~2999までは「あり」,3000以上を「多い」とした。この評価を年代別にみると,測定値による結果と同様に,年齢とともに「あり」,「多い」割合が増加する傾向がみられたが,男女間に有意な差は認められなかった。各口腔機能について健全群と機能低下群に分け,3段階評価の分布を比較すると,舌口唇運動機能にのみ有意な差がみられ,機能低下群の方が「あり」,「多い」の割合が有意に高い結果であった(p<0.01)。
 今回の対象者が一般的な日本人に準ずると仮定すれば,女性に歯周病が多いのはP.g.菌数の違いではなく,局所の炎症反応の出方の性差であると考えられる。また,舌機能とP.g.菌数の関連がみられたことは,舌運動が歯周組織の清掃作用を有すること,舌が歯周局所へ唾液免疫を輸送する媒体となっていること,舌背部での口腔内細菌増殖を抑制することなどが推測される。歯周病の改善には口腔機能,特に舌口唇運動機能の改善が有効である可能性が示唆された。
(COI開示:なし,愛知県歯科医師会倫理委員会 承認番号 愛歯発第202号)