一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演7 口腔機能1

2022年6月12日(日) 09:00 〜 09:30 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:吉川 峰加(広島大学大学院医系科学研究科 先端歯科補綴学)

[O7-03] 統合失調症患者における口腔環境の実態調査

○松原 ちあき1,2、今田 良子3、山口 浩平3、中川 量晴3、吉見 佳那子3、中根 綾子3、日髙 玲奈4、古屋 純一5,3、坂東 誉子6、日下 輝雄6,7,8、戸原 玄3 (1. 静岡県立大学短期大学部 歯科衛生学科、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、3. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、4. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野、5. 昭和大学歯学部 高齢者歯科学講座、6. 医療法人社団東京愛成会 高月病院、7. 経済産業省大臣官房会計課厚生企画室、8. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御分野)

【目的】
 精神科入院患者での高齢化は進んでいる。入院の原疾患となる統合失調症では、症状や抗精神病薬の副作用から不良な口腔衛生状態やう蝕リスクが高いこと等が知られている。それらは誤嚥性肺炎など有害事象のリスクを高めるため、歯科の積極的な介入が求められる。加齢や薬剤で生じる口腔機能の低下は、嚥下障害や低栄養の要因のひとつになるため、高齢化が進む統合失調症患者においても口腔機能管理が課題となる。しかし、統合失調症患者の口腔機能に関する報告は今までにない。本研究は、統合失調症患者での口腔機能管理の在り方を検討するため、統合失調症患者を対象に口腔環境等の実態調査し、測定値について健常高齢者との比較を行った。
【方法】
 2021年7~9月に精神科病院入院中の統合失調症患者のうち、歯科診療に際したスクリーニング検査受診者34名(男性のみ)を対象とした。調査項目は、基礎情報、口腔環境(口腔衛生状態、口腔機能(オーラルディアドコキネシス(ODK)、舌圧等))、身体機能、栄養状態とした。また、2018年実施の口腔機能調査に参加した地域在住高齢者121名のうち、比較対象者との特性を揃えるため女性および精神疾患の既往者を除く37名を対象とし、高齢者と統合失調症患者で、評価項目の2群間比較(年齢を調整した共分散分析)を行った。有意水準は5%とした。
【結果と考察】
 統合失調症患者(平均年齢57.9歳)では、平均8.3錠の内服薬があり、根面う蝕を有する者48.8%、58.1%の者にプラーク付着が中等度以上みられた。高齢者(平均年齢73.4歳)との比較では、統合失調症患者で残存歯数、ODK、握力、下腿周囲長(CC)の項目で有意に低い値を示した(p<0.05)。一方で舌圧、Body Mass Index(BMI)では有意な差は認められなかった。以上から統合失調症患者では、高齢者と比較しても舌口唇運動機能の巧緻性が不良であり、舌圧は同程度であることが明らかとなった。また体格指数を示すBMIの低下はないが、握力とCCが有意に低く、外見には現れない筋量低下あることが考えられた。そのため統合失調症患者では、口腔衛生管理のみならず、口腔機能管理が必要であり、高齢期以前から舌運動機能や筋力を考慮した介入が重要と示唆された。
(COI 開示:なし)(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号D2020-074)