[P1-02] 歯科訪問診療患者における低栄養と関連する口腔保健指標の検討
【目的】
要介護高齢者における低栄養は生命予後に直結することから,栄養状態の維持・改善は要介護高齢者やその家族の生活の質を担保するためにも重要である。地域高齢者を対象とした研究では口腔状態や機能と栄養状態との関連は様々な報告がなされており,口腔保健指標として咀嚼能力やそれを担保する現在歯数や臼歯部咬合支持がよく用いられている。本研究の目的は,歯科訪問診療患者において口腔保健指標と栄養状態との関連を検討することである。
【方法】
本研究は福島県A歯科医療機関の65歳以上歯科訪問診療患者で経口摂取を行っている61名(男性23名,平均年齢84.0±8.3歳)が対象である。口腔保健指標は,現在歯数,臼歯部咬合支持の有無,舌圧に加え, Tongue Coating Index(TCI)を用いた口腔衛生状態,含嗽の可否を採取した。栄養状態の指標は,InbodyS10(インボディ・ジャパン社)を用いた生体インピーダンス法による骨格筋量指数およびMini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)とした。骨格筋量指数はサルコペニアの診断基準であるAWGS2019に基づき対象者を2分した(男性:7.0以上,女性:5.7以上)。MNA-SFについては,対象者を12点以上もしくはそれ未満に2分した。各口腔保健指標と栄養状態との関連を,ロジスティック回帰分析を用いて統計学的に検討した。
【結果と考察】
対象者の現在歯数は平均11.8±9.1歯であった。骨格筋量指数低値をアウトカムとした場合の年齢および性別で調整したオッズ比は,高いTCIと含嗽困難が有意に高値を示した一方,現在歯数の低下や咬合支持の喪失,舌圧の低下は有意に高値を示さなかった。MNA-SFとの関連についても,高いTCIは年齢および性別で調整したオッズ比が有意に高値を示した一方,現在歯数の低下や咬合支持の喪失,舌圧の低下は有意に高値を示さなかった。含嗽については,含嗽困難に該当する者の全てが低栄養もしくは低栄養のおそれに該当していた。
本研究の歯科訪問診療患者において,現在歯数の低下や臼歯部咬合支持の喪失ではなく,口腔衛生状態や含嗽の可否が栄養状態と関連していた。
(COI開示:なし)
(東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会承認番号:2019-3-036)
要介護高齢者における低栄養は生命予後に直結することから,栄養状態の維持・改善は要介護高齢者やその家族の生活の質を担保するためにも重要である。地域高齢者を対象とした研究では口腔状態や機能と栄養状態との関連は様々な報告がなされており,口腔保健指標として咀嚼能力やそれを担保する現在歯数や臼歯部咬合支持がよく用いられている。本研究の目的は,歯科訪問診療患者において口腔保健指標と栄養状態との関連を検討することである。
【方法】
本研究は福島県A歯科医療機関の65歳以上歯科訪問診療患者で経口摂取を行っている61名(男性23名,平均年齢84.0±8.3歳)が対象である。口腔保健指標は,現在歯数,臼歯部咬合支持の有無,舌圧に加え, Tongue Coating Index(TCI)を用いた口腔衛生状態,含嗽の可否を採取した。栄養状態の指標は,InbodyS10(インボディ・ジャパン社)を用いた生体インピーダンス法による骨格筋量指数およびMini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)とした。骨格筋量指数はサルコペニアの診断基準であるAWGS2019に基づき対象者を2分した(男性:7.0以上,女性:5.7以上)。MNA-SFについては,対象者を12点以上もしくはそれ未満に2分した。各口腔保健指標と栄養状態との関連を,ロジスティック回帰分析を用いて統計学的に検討した。
【結果と考察】
対象者の現在歯数は平均11.8±9.1歯であった。骨格筋量指数低値をアウトカムとした場合の年齢および性別で調整したオッズ比は,高いTCIと含嗽困難が有意に高値を示した一方,現在歯数の低下や咬合支持の喪失,舌圧の低下は有意に高値を示さなかった。MNA-SFとの関連についても,高いTCIは年齢および性別で調整したオッズ比が有意に高値を示した一方,現在歯数の低下や咬合支持の喪失,舌圧の低下は有意に高値を示さなかった。含嗽については,含嗽困難に該当する者の全てが低栄養もしくは低栄養のおそれに該当していた。
本研究の歯科訪問診療患者において,現在歯数の低下や臼歯部咬合支持の喪失ではなく,口腔衛生状態や含嗽の可否が栄養状態と関連していた。
(COI開示:なし)
(東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会承認番号:2019-3-036)