一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表1 介護・介護予防

[P1-05] 新型コロナウイルス感染症拡大が高齢者施設職員の感染対策意識や口腔ケア業務に与えた影響

○日髙 玲奈、田坂 樹、松尾 浩一郎 (東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】
 高齢者施設は、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者等が集団で生活をする場であるため、感染症の発生を予防することが重要となる。2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴って感染症への対応がより一層強く求められるようになり、職員を取り巻く環境は大きく変化した。そこで本研究では、COVID-19感染拡大によって、高齢者施設に勤務する職員の感染対策意識と口腔ケア業務に及ぼした影響を明らかにすることを目的として調査を実施した。
【方法】
 2021年9月から10月にかけて、関東・東海・九州地方の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設40施設に勤務する職員973名(男性358名、女性634名)を対象に無記名自記式質問票調査を実施した。質問票は職員の感染対策に関する意識や、口腔ケア業務に関する項目から構成した。統計解析は記述統計を用いた。
【結果と考察】
 回答者の職種は介護職員632名(65.0%)、看護職員144名(15.0%)、介護支援専門員42名(4.3%)、その他123名(12.7%)であった。感染拡大後に日常業務で気を付けるようになったこととして「施設に入る前の手指消毒」や「排泄介助後の手指消毒」、「手すり等の消毒」が挙げられた。また、日常生活で気を付けるようになった点として、「マスクの常時着用」や「3密を避ける」、「手指消毒の徹底」が挙げられた。
 口腔ケア業務は回答者の80%以上が実施しており、感染拡大による頻度や時間の変化はほとんどみられなかった。実施時に気を付けるようになった点として「利用者との距離感」や「実施前後の手指消毒」を選択する者が多く、実施に対して108名(13.0%)が困難感を感じていることも明らかとなった。
 COVID-19感染拡大の影響により、職員の感染症予防対策に対する意識が向上していることが考えられた。また、口腔ケア業務の実施状況はほとんど変化がみられなかったため、高齢者施設ではコロナ禍においても感染対策に十分留意しながら、口腔衛生状態を良好に保つための取り組みが継続的になされていることが示唆された。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認 D2021-038)