The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表2 口腔機能

[P2-09] 臼歯咬合支持を喪失したまま義歯を使用せず経口摂取している高齢者に関する調査

○森豊 理英子、中川 量晴、山口 浩平、石井 美紀、吉見 佳那子、中根 綾子、内田 有俊、戸原 玄 (東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
要介護高齢者は,通院困難などの理由で,義歯を装着できないまま長期に機能的咬合支持を喪失している者が多い。摂食嚥下の臨床では,このような高齢者の中に,義歯を使用せずとも咀嚼を要する食品を摂取し,食塊形成や嚥下が良好な例を経験する。これは顎堤などで食品を押しつぶしていると推測され、その能力の評価は臨床上重要であると考える。今回予備調査として、義歯を使用せず食事摂取をしている高齢者が実際どの程度存在するか調査した。
【方法】
2021年9月1日~10月31日の期間に東京医科歯科大学病院摂食嚥下リハビリテーション科を受診した65歳以上の嚥下障害患者200名と高齢者福祉施設に入居する97名,計297名を対象とした。当科受診患者はカルテを後ろ向きに,施設入居者は施設に聞き取りを実施した。調査項目は,年齢,性別,経管栄養の有無、臼歯咬合支持の有無,義歯の有無およびその義歯を使用して食事しているか,の4項目とし,対象者を嚥下障害患者と要介護高齢者に分け,義歯を使用せず経口摂取している者の割合を算出した。なお,本研究では統計学的な解析は実施していない。
【結果と考察】
嚥下障害がある高齢者(平均年齢80.3±8.2歳,男性108名,女性92名)では,経管栄養をしている者は57名,経口摂取をしている者は143名であった。この143名のうち,臼歯咬合支持が無い者は64名(44.8%),義歯が有る者は41名(28.7%),臼歯咬合が無くかつ義歯を使用せず経口摂取している者は17名(11.9%)であった。一方,要介護高齢者(平均年齢86.6±7.6歳,男性27名,女性70名)では,臼歯咬合支持が無い者は52名(53.6%),義歯が有る者は21名(21.6%),臼歯咬合が無くかつ義歯を使用せず経口摂取している者は32名(33.0%)であった。嚥下障害患者より要介護高齢者の方が,義歯を使用せず経口摂取をしている者の割合が多く,要介護高齢者では約3割が前歯のみあるいは顎堤で食品を押しつぶして食事摂取していることが明らかになった。この調査では、食事摂取が安全にされているかまでは調査できていない。一定数存在する義歯を使用せず経口摂取をしている高齢者の口腔で食品を押しつぶす能力を、客観的に評価する指標が必要であると思われる。
(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学 倫理審査委員会承認番号D2020-024)