一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表2 口腔機能

[P2-11] 口腔機能低下症患者に対する半年間の口腔機能管理の実施効果

○堀部 耕広、堀 綾夏、栁澤 光一郎、竜 正大、上田 貴之 (東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【目的】 
 口腔機能低下症と診断された高齢者には,管理計画を立案して口腔機能管理を実施する。その管理内容や期間については,個々の歯科医師の判断に委ねられるところが大きく,効果検証に関する報告も少ないのが現状である。 そこで今回,6か月間継続して口腔機能管理を行った口腔機能低下症患者を対象に,口腔機能管理の実施効果を検討することを目的に調査した。
【方法】
 東京歯科大学水道橋病院補綴科の65歳以上の患者で,口腔機能低下症と診断された102名(年齢78.0±7.0歳) を対象とした。その中で6か月間口腔機能管理を行い,再評価を行った41名(年齢79.8±6.3歳)を解析対象者とした。残りの対象者は来院が途絶えたり、新たな治療を開始したため対象から外れた。口腔機能精密検査に加え, 佐藤らの咀嚼機能評価表,最大握力,厚労省作成の基本チェックリスト,Body Mass Index (BMI),食品摂取多様性スコア,フェイススケールの測定を行った。担当医が各患者に適すると考える管理計画を策定して6か月間の管理を実施後,開始時と同様の項目について再評価を行った。検査および口腔機能管理は,すべて各担当歯科医師と歯科衛生士によって行われた。統計解析は,開始時と再評価時の各評価項目の比較をWilcoxonの符号付順位検定で行った。
【結果と考察】
 開始時の口腔機能精密検査での該当率は,口腔不潔51.2%,口腔乾燥60.5%,咬合力79.1%,舌口唇運動72.1%, 咀嚼機能44.2%,低舌圧55.1%,嚥下機能23.3%であった。開始時と再評価で,最大舌圧は26.8±10.0kPaから30.2±6.9kPaに,グルコース溶出量による咀嚼能力検査は104.8±55.3g/mlから122.9±56.2g/mlに, 咀嚼機能評価表は64.8%から72.3%になり,開始時と再評価時の間に有意差を認めた。他の項目では,両群間に有意差は認めなかった。管理内容は,咀嚼指導、生活習慣、栄養や食生活等の指導が51.2%,口腔機能訓練等が行われたものが48.8%であった。
以上のことから,6か月間の口腔機能管理により口腔機能が向上もしくは維持できたと考えられ,高齢者への口腔機能管理の有効性が示された。今後は機能訓練や栄養指導など介入内容と効果の関係性を検証する必要がある。
COI開示:なし
東京歯科大学倫理審査委員会承認番号 986