一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表2 口腔機能

[P2-14] 新規開発されたジェルタイプの義歯安定剤による口腔乾燥やカンジダに対する効果

○岡田 和隆、馬場 陽久、平良 賢周、武田 雅彩、木村 千鶴、渡邊 裕、山崎 裕 (北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】
 義歯安定剤は適切に使用されないと、 義歯や口腔粘膜に残留した義歯安定剤はカンジダなどの微生物の温床になることが指摘されている。 最近、 水洗で容易に除去可能なジェルタイプの義歯安定剤が登場した。 そこで口腔乾燥を有する全部床義歯装着者において、この義歯安定剤の使用が口腔乾燥やカンジダにどのような影響を及ぼすか、 従来のクリームタイプの義歯安定剤と比較検討した。
【方法】
 北海道大学病院に通院中の全部床義歯装着者のうち、義歯装着後3か月以上経過した後に義歯の形態や咬合に修正の必要がなく、義歯に十分な満足感が得られず、口腔乾燥が認められ、研究参加同意取得の3か月以前に義歯安定剤を使用したことがない20歳以上の者を対象とした。対象者には、義歯安定剤としてジェルタイプ(ピタッと快適ジェル、以下Pi)またはクリームタイプ(新ポリグリップSa、以下Sa)を1か月間使用してもらい、その前後で口腔乾燥に関する指標とカンジダ菌種や菌数を評価し、統計学的に検討した。なお、どちらの義歯安定剤を使用するかはブロックランダム化で割付を行った。
【結果と考察】
 現在までに対象者は14名(男性3名、女性11名、年齢の中央値83歳、57~91歳)で、Pi使用者、 Sa使用者はそれぞれ7名ずつであった。口腔粘膜および義歯に付着するカンジダに関し、Pi群、Sa群の両群において、義歯安定剤使用前のカンジダ菌種の組成に相違はなかった。口腔粘膜水分量では、両群とも舌背の水分量を増加させる効果を認め、Pi群の方がその効果は大きかった。頬粘膜の水分量では、 Sa群で有意な減少を認めた。主観的口腔乾燥感および客観的口腔乾燥では、どちらの義歯安定剤も効果は認めなかった。カンジダについてはその菌数が介入前から極端に多い者を除外して解析した。義歯に付着するカンジダについて、いずれの義歯安定剤も介入前後で菌数に明らかな差を認めなかった。一方、 口腔粘膜のカンジダ菌数はPi群では減少し、菌種別では特にCandida glabrataでその傾向が明らかであった。Sa群では逆にカンジダ菌数の増加が認められたが、 菌種による差が認められた。 本研究は対象者数が少ないため、さらに対象者数を増やした検討が望まれる。
(COI開示:なし)
(国立大学法人北海道大学臨床研究審査委員会 承認番号 認018-047)