The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表5] 加齢変化・基礎研究

ポスター発表5 加齢変化・基礎研究

[P5-03] なぜ口腔細菌は誤嚥性肺炎の原因となるのか? -Pg菌の短線毛による呼吸器細胞からのサイトカイン誘導-

○髙橋 佑和1,2、今井 健一2、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部 歯科補綴学第Ⅰ講座、2. 日本大学歯学部 感染症免疫学講座)

【目的】
 高齢者や要介護者は口腔機能が低下するため,口腔細菌を含んだ唾液や食物残渣を誤嚥する機会が多くなり肺炎の発症リスクが高まる。しかし,なぜ口腔細菌は誤嚥性肺炎の原因となるのか,その機序は未だよく解っていない。P. gingivalis (P.g.) は,FimA(長線毛)とMfa1(短線毛)の二種類の線毛を有している。菌体の最外層に存在するため,細菌を誤嚥した場合,宿主細胞に最初に作用する病原因子と考えられる。FimAに関しては様々な生物活性が知られているが,現在注目されているMfa1に関しては研究がはじまったばかりで,構造以外不明である。
 これまでに演者らは,歯周病原菌が様々な呼吸器細胞において肺炎の中心的役割をなす炎症性サイトカインを強く誘導することを報告した。今回,歯周病原菌のどの病原因子が本作用を担うかを検討するため,Mfa1とその受容体に注目し検討を行った。
【方法】
 精製したFimA,Mfa1及びLPSを気管支上皮細胞に添加し,IL-8とIL-6量を定量した。Mfa1とToll様受容体(TLR)との結合は,PCを用いた蛋白質相互作用解析を行うことにより検討した。また,TLR2もしくはTLR4 を強制発現させた293/TLR2と293/TLR4細胞を用いてLuciferase assayを行った。さらに,TLRの中和抗体で前処理することにより,実際のサイトカイン発現におけるTLRの関与を確認した。(倫理審査対象外)
【結果と考察】
 気管支上皮細胞にMfa1を添加した結果IL-8とIL-6の遺伝子発現が強く誘導された。Mfa1は濃度依存的にIL-8とIL-6の産生を誘導したが,FimAとLPSに関しては高濃度添加しても両サイトカインの産生に変化が認められなかった。Mfa1はTLR2と4の両方とそれぞれ異なる方向で結合する可能性があることが推察された。細胞実験の結果,Mfa1は293/TLR2細胞においてNF-κBを活性化したが, TLR4細胞では変化が認められなかった。さらに, TLR2の中和抗体処理においてのみ,Mfa1誘導性のIL-8とIL-6の産生が抑制された。
 今回新たに,P.g.のMfa1がIL-8とIL-6を誘導すること,その作用にTLR2が深く関与することが明らかとなり,誤嚥性肺炎の発症においてMfa1が重要な役割を担っていることが示唆された。(COI開示:なし)