The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表5] 加齢変化・基礎研究

ポスター発表5 加齢変化・基礎研究

[P5-07] 口腔粘膜炎モデルを用いたヒアルロン酸シートの口腔粘膜炎治癒効果の検討

○鈴木 慶、中野 旬之、小越 菜保子、中島 世市郎、植野 高章 (大阪医科薬科大学口腔外科学教室)

【目的】
超高齢社会を迎えた我が国における口腔環境の加齢的変化として, 口腔乾燥が挙げられ口腔粘膜炎や誤嚥性肺炎を惹起することが問題となっている。
現在, 口腔乾燥に対しては保湿目的にジェルタイプのヒアルロン酸が用いられることが多い。同タイプでは唾液や口腔粘膜の波動により口腔粘膜に長時間作用させることは困難であり, 頻回な使用が必要となる。しかし, 要介護高齢者において頻回な使用は困難であることが多く, 新規治療法の開発が必要となっている。
本研究では, 口腔粘膜に長時間滞留し効果を持続させるため, フリーズドライ法によるシート状ヒアルロン酸を新規開発し, 本シートの口腔粘膜炎治癒効果における有用性を検証した。
【方法】
7週齢雄性ハムスターを用いて口腔粘膜炎モデルを作製し, ヒアルロン酸シートが口腔粘膜炎の治癒に有用か評価した。
口腔粘膜炎は, ハムスターの頬粘膜に50%酢酸を含ませたろ紙 (8mm×8mm) を3分間塗布し口腔粘膜炎を作製した。口腔粘膜炎の評価は、酢酸塗布後の口腔粘膜炎の面積を経時的に計測し, 摘出した口腔粘膜炎組織を病理組織学的に観察した。
口腔粘膜炎に対するヒアルロン酸シートの効果検証は, 酢酸塗布し口腔粘膜炎を作製した翌々日をDay1とし, 5日間継続して口腔粘膜炎にヒアルロン酸シートを貼付した治療群と, ヒアルロン酸シートを貼付しない対照群の2群について, 口腔粘膜炎の面積を経時的に計測し統計学的に比較検証した。
【結果と考察】
1)対照群における各個体の口腔粘膜炎のサイズに大きなばらつきはなく, 肉眼的に口腔粘膜炎が消失したのは, 28日目であった。口腔粘膜炎を病理組織学的に評価した結果, 2日目で上皮の欠落と粘膜下層への炎症性細胞浸潤を認めた。17日目では、上皮の再生を認め, 炎症性細胞浸潤の明らかな減少を認めた。28日目では, 上皮は再生しており炎症性細胞は消失していた。
2)Day2における口腔粘膜炎の面積の縮小率は, 対照群は91.1±7.0%であり, 治療群では62.1±9.3%であった。
以上より, ヒアルロン酸シートが口腔粘膜炎の治癒に影響を及ぼす可能性が示唆された。
今後はさらに実験を加え, 口腔乾燥の新規治療法としてのヒアルロン酸シートの有用性を評価していく予定である。
COI開示:なし 神戸薬科大学動物実験委員会 承認番号:2021-046