一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表5 加齢変化・基礎研究

[P5-08] 前向きコホート研究による根面う蝕の有病および罹患状況とリスクファクター

○杉原 直樹1、鈴木 誠太郎1、今井 光枝1、江口 貴子2、上條 英之3 (1. 東京歯科大学衛生学講座、2. 東京歯科大学短期大学歯科衛生学科、3. 東京歯科大学歯科社会保障学)

【目的】
 高齢者の残存歯数が増加することによって、根面う蝕の発病リスクはさらに増加し、その予防の必要性もさらに高くなると考えられる。本研究の目的は根面う蝕の前向きコホート研究を実施し、大規模集団での有病および罹患状況を明らかにすると共に、発病に関連する要因についての曝露を調査し発病のリスクファクターを明らかにすることである。
【方法】
 2016年と2018年の7~8月に大企業の都内本社従業員のうち、同意を得られた者に対して口腔内診査および自記式質問紙調査を実施した。2回の調査において前向きコホート集団となった25~63歳(平均年齢44.4±9.2歳)の 332名(男性232名、女性100名)を対象に解析を行った。
 口腔診査は歯冠う蝕、根面う蝕、歯周組織および口腔清掃状態別にそれぞれ1名の歯科医師(合計3名)により診査を実施した。口腔診査の基準はWHOの口腔診査法(第5版)に準拠して実施した。水平位チェアと口腔内ライトを用いて実施した。
【結果と考察】
 ベースライン時の口腔内状況では、根面う蝕有病者率は15.7%、一人平均0.36歯を所有していた。また歯肉退縮の有病者率は82.5%、一人平均6.4歯を所有していた。2年間の根面う蝕累積罹患率は、男性で13.3~39.6%、 女性で0~46.2%と年齢群が高くなるにつれて、累積罹患率も高くなった。2年後の根面う蝕罹患(増加)を目的変数とした時に性別と年齢で調整した場合の多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った結果、 ベースライン時の歯冠部DMF歯数および歯肉退縮歯数が高いと罹患のリスクが高く、かかりつけの歯科医がある者の方が罹患のリスクが低いことが示された。
 日本人の根面う蝕の有病および罹患状況を明らかにするためには、個々の集団の調査では限界があり、国家統計調査を実施することが必要である。また根面う蝕の予防のためには、最大のリスクファクターである歯肉退縮の発生を極力抑制することが重要である。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会 承認番号806)