[P6-01] 加齢が頸椎疾患の後方アプローチ術後の嚥下機能にどのように影響するか
【目的】
頸椎疾患に対する後方除圧固定術および後方除圧術(後方アプローチ術)は,前方からのアプローチより頻度が低いが,術後合併症として嚥下障害を生じる。加齢は,頸椎疾患術後の嚥下機能に影響する要因の一つとされているが詳細は不明である。今回,後方アプローチ術前後の嚥下機能を年齢別に解析し,加齢が嚥下機能に与える影響を検討した。
【方法】
当院整形外科で後方アプローチ術が予定された頸椎疾患患者を対象とした。手術前日と術1週後に嚥下造影検査(VF)を実施し,濃いとろみ水4ccを嚥下したときのVF画像からDysphasia Severity Scale(DSS: 1-7),Functional Oral Intake Scale(FOIS: 1-7),前後と上下方向の舌骨運動距離(mm),UES(Upper Esophageal Sphincter)最大開大量(mm),食塊の咽頭通過時間(s),Bolus Residue Scale(BRS: 1-6),嚥下回数、 咽頭後壁の最大距離(mm)を計測した。計測には画像計測ソフトDIPP-Motion(DITECT)を用いた。術前後の結果を対象者全体および年齢別で65歳未満(Y群)と65歳以上(O群)に分け,それぞれの術前後の結果をWilcoxonの符号付き順位検定を用いて解析した。
【結果と考察】
対象者は39名(男23名,女16名,年齢中央値:69歳,26-86歳)で,Y群16名,O群23名であった。対象者全体の手術前後では嚥下に関する諸器官の運動に変化はなかったが, FOIS, DSS, BRSに術後悪化を認めた(p=0.008,0.003,0.006)。Y群は術後にDSSが悪化(p=0.046)したが, 嚥下運動の制限は認めなかった。一方,O群は術後にFOISとDSSが悪化し(p=0.014,0.024),舌骨前方運動量が制限され(p=0.015),嚥下回数と咽頭残留が増加した(p=0.034,0.024)。よって,高齢者の後方アプローチ術後は嚥下運動の制限を生じやすいことが明らかとなった。特に高齢の頸椎疾患患者は,術前からの嚥下機能評価が重要となる例があり,術前から術後嚥下機能低下に配慮する必要がある。
(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認 D2019-004)
頸椎疾患に対する後方除圧固定術および後方除圧術(後方アプローチ術)は,前方からのアプローチより頻度が低いが,術後合併症として嚥下障害を生じる。加齢は,頸椎疾患術後の嚥下機能に影響する要因の一つとされているが詳細は不明である。今回,後方アプローチ術前後の嚥下機能を年齢別に解析し,加齢が嚥下機能に与える影響を検討した。
【方法】
当院整形外科で後方アプローチ術が予定された頸椎疾患患者を対象とした。手術前日と術1週後に嚥下造影検査(VF)を実施し,濃いとろみ水4ccを嚥下したときのVF画像からDysphasia Severity Scale(DSS: 1-7),Functional Oral Intake Scale(FOIS: 1-7),前後と上下方向の舌骨運動距離(mm),UES(Upper Esophageal Sphincter)最大開大量(mm),食塊の咽頭通過時間(s),Bolus Residue Scale(BRS: 1-6),嚥下回数、 咽頭後壁の最大距離(mm)を計測した。計測には画像計測ソフトDIPP-Motion(DITECT)を用いた。術前後の結果を対象者全体および年齢別で65歳未満(Y群)と65歳以上(O群)に分け,それぞれの術前後の結果をWilcoxonの符号付き順位検定を用いて解析した。
【結果と考察】
対象者は39名(男23名,女16名,年齢中央値:69歳,26-86歳)で,Y群16名,O群23名であった。対象者全体の手術前後では嚥下に関する諸器官の運動に変化はなかったが, FOIS, DSS, BRSに術後悪化を認めた(p=0.008,0.003,0.006)。Y群は術後にDSSが悪化(p=0.046)したが, 嚥下運動の制限は認めなかった。一方,O群は術後にFOISとDSSが悪化し(p=0.014,0.024),舌骨前方運動量が制限され(p=0.015),嚥下回数と咽頭残留が増加した(p=0.034,0.024)。よって,高齢者の後方アプローチ術後は嚥下運動の制限を生じやすいことが明らかとなった。特に高齢の頸椎疾患患者は,術前からの嚥下機能評価が重要となる例があり,術前から術後嚥下機能低下に配慮する必要がある。
(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認 D2019-004)