一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表6 全身管理・全身疾患

[P6-02] 高齢頚椎疾患患者の術前後における嚥下機能の変化 -咀嚼嚥下時の運動学的解析-

○有瀧 航太、中川  量晴、吉澤 彰、齋木 章乃、柳田 陵介、吉見 佳那子、山口 浩平、中根 綾子、戸原 玄 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
我々は頚椎疾患に対する手術後の嚥下機能を運動学的に検討し、トロミ水摂取時、術前と比較し有意に舌骨運動が制限され、UESの開大量が減少することを明らかにした。一方、健常者の咀嚼嚥下は液体嚥下と比較して舌骨の動きが異なるが、手術を受けた頚椎疾患患者の咀嚼嚥下がどのように変化するかは検討されていない。そこで、 咀嚼を要する食材を用いて頚椎疾患手術前後の咀嚼嚥下の嚥下動態を解析した。
【方法】
当院整形外科において手術した患者で術前後の嚥下造影検査(VF)に同意した97名のうち、前方アプローチ術での頚椎疾患の手術を施行した患者を対象とした。手術前日と術1週後にVFを実施し、コーンフレークを咀嚼嚥下させたときのVF画像から、前後と上下方向の舌骨運動距離、食道入口部最大開大量、咽頭通過時間、嚥下回数、咽頭残留量(6段階)を評価した。また、摂食嚥下障害の臨床的重症度分類(7段階)と喉頭侵入・誤嚥の重症度スケール(8段階)は、液体4ccを嚥下させて評価した。動画解析にはDIPP-Motion(DITECT)を用いた。各項目で術前後に相違があるかWilcoxonの符号付き順位検定を用いて検討した。
【結果と考察】
対象者は20名であった(男13名、女7名、年齢中央値:65.5歳、60-77歳)。術前と比較して術後の舌骨移動量は、前後、上下方向とも有意差を認めなかったが、共に制限された。食道入口部最大開大量は減少傾向(p=0.079)、 咽頭通過時間は有意に減少(p=0.012)した。また嚥下回数は有意に増加(p=0.003)し、咽頭残留量、摂食嚥下障害の臨床的重症度分類、喉頭侵入・誤嚥の重症度スケールは術後有意に悪化(それぞれp=0.003, p=0.007, p=0.041)した。これまでに明らかにしたトロミ水摂取時の嚥下動態と異なり、咀嚼嚥下時は、舌骨運動が制限されないにも関わらずUESが開きづらく、咽頭残留が増加することが明らかになった。咀嚼嚥下は液体嚥下と比較して、嚥下時に舌の押し上げる移動量が大きいため舌骨の上方移動量が増加する。また、 術後の嚥下回数が増加したことから、一回の嚥下につき嚥下の意識化がなされた可能性がある。これらの要因が頚椎疾患手術前後の咀嚼嚥下の嚥下動態に影響したかもしれない。


(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認 D2019-004)