一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表6 全身管理・全身疾患

[P6-03] フルデジタルワークフローによる止血シーネの製作

○猪越 正直、副田 弓夏、秋山 洋、上田 圭織、久保田 一政、水口 俊介 (東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【目的】
 近年のデジタル技術の進歩は著しく,多くの歯科治療にデジタルワークフローが導入されている。補綴装置や口腔内装置の製作にCAD-CAM技術が応用され,その有効性が報告されている。今回,フルデジタルワークフローによる止血シーネ製作を行い,良好な予後が得られた症例を経験したため報告する。

【症例の概要と処置】
 87歳女性。残存歯の動揺と疼痛による咀嚼障害を主訴に来院した。深部静脈血栓症,高血圧症,脂質異常症, 不安神経症,不眠症の既往があり,抗凝固薬としてエリキュースを服用していた。下顎左側犬歯を保存不可と判断し,抜歯をする方針となった。止血シーネ製作のため,口腔内スキャナーを用いて下顎歯列のデジタル印象採得を行った。得られた口腔内データを3D CADソフトウェア(FreeForm,3D SYSTEMS;3Shape Dental System,3Shape)に取り込み,抜歯部位の削除と止血シーネのデザインをした後,3Dプリンタ(Form 3, formlabs)を用いて止血シーネの製作を行った。下顎左側犬歯の抜歯後,抜歯窩に局所止血剤を添加して縫合し,止血シーネを装着した。抜歯2日後の来院時に止血確認を行い,抜歯窩の止血状態は良好と判断し,止血シーネを除去,創部の消毒を行った。抜歯7日後に創部の消毒と抜糸を行った。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【結果と考察】
 本症例では要抜歯部位に著しい動揺が認められ,印象材による印象採得が困難であった。抜歯当日に印象採得を行い,止血シーネを製作する方法も考えられたが,治療時間が長くかかる点を考慮して,フルデジタルワークフローによる止血シーネ製作を行った。製作した止血シーネの適合は良好であり,チェアサイドでの調整は不要であった。デジタル技術を応用することで,患者負担の少ない治療が実現できたと考えている。

(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)