The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-05] 脳出血後遺障害を有する患者への長期にわたる歯科衛生士の取り組み

○池田 由香、鶴巻 浩 (社会医療法人仁愛会 新潟中央病院 歯科口腔外科)

【目的】
 脳卒中は要介護や寝たきりの最大の原因で、麻痺などの後遺症で日常生活に支障をきたすと、口腔内に問題を抱えながらも歯科通院できず、同疾患患者の口腔環境は劣悪な状態に陥りやすい。今回、脳出血発症後早期より歯科衛生士が介入し、初診から22年経過し92歳となった現在も口腔機能維持に取り組んでいる症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 患者:70歳、男性。主訴;左下1の動揺。既往歴:2000年8月に脳出血で当院脳神経外科に入院。他に高血圧症、糖尿病で内服治療中。現病歴:当院入院中に左下1の歯周炎急性発作を発症し当科受診。初診時現症:全身状態;右半身麻痺で車椅子使用、構音障害あり。口腔内所見;左下1動揺著明。残存歯数25本、右上臼歯と下顎残存歯に4~6㎜の歯周ポケットあり。プラークコントロール不良。レントゲン所見: 全顎的に水平的骨吸収あり。診断: 中等度歯周炎。処置および経過:左下1の抜歯、歯周基本治療、義歯調整を施行。固定性補綴物を希望し、右下6、7と左下2部にインプラント埋入。歯周炎の改善を認め歯周病安定期治療(以下SPT)に移行。糖尿病による易感染性、麻痺による口腔清掃不良などのリスクを考慮し、SPTの頻度は月1回とした。2019年5月、飲食時のむせや食べこぼしなどの自覚症状があり、口腔機能低下症検査を実施。口腔乾燥、舌口唇機能低下、低舌圧、嚥下機能低下の4項目が該当し、舌・口腔周囲筋運動や構音訓練などの口腔リハビリを開始。SPTと併せて現在も継続中。
 なお、本報告の発表について患者本人から文章による同意を得ている。
【結果と考察】
 22年間での喪失歯数は4本で、4㎜以上の歯周ポケットの割合は初診時で40%、現在は17.9%まで改善。PCRは初回で35%、現在では20%台を維持。口腔機能低下症検査では口腔乾燥が改善し、現在の該当項目は3項目となった。定期的な歯科通院が困難でありながら、長期に継続したメインテナンスが行え良好な結果が得られた要因としては、脳出血後遺症について理解し、患者に寄り添いながらモチベーション向上に努め、患者と患者家族の理解と協力を得ることができたことなどが挙げられる。メインテナンス毎の注意深い観察と、加齢変化に合わせた入念なサポートを行うことで、高齢障害者の口腔機能の維持に寄与することができたと考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)