一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-13] 摂食嚥下機能障害患者に対し訪問診療で抜歯を行った症例

○大久保 真衣1、杉山 哲也2、柴原 孝彦3、石田 瞭1 (1. 東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室、2. 東京歯科大学千葉歯科医療センター総合診療科・摂食嚥下リハビリテーション科、3. 東京歯科大学千葉歯科医療センター口腔外科)

【目的】
摂食嚥下リハビリテーションのため歯科訪問診療を受けていたが,病状の進行とともに口腔衛生管理が難しくなり,抜歯を行った症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
89歳の女性。 既往歴にレビー小体型認知症があり意思の疎通は困難であった。口腔内は上顎右側8番のみ,下顎に多数残存歯があった。約3か月前に誤嚥性肺炎を発症し,経口摂取禁止となった。誤嚥性肺炎前で,要介護度5, 日常生活自立度 C1,認知症自立度 IVであった。肺炎前の摂食状況は全介助で,嚥下調整食の2程度を摂取していた。経口摂取を再開したいということで,VE検査による嚥下機能評価を行ったところ,安静時の痰の貯留は少なく,嚥下調整食1J程度の経口摂取を開始した。口腔衛生管理では,以前より口腔清掃の拒否が認められ,介護者では清掃困難なことがしばしばあったが,次第に歯周状態が悪化し,抜歯を検討した。なお,本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
かかりつけ訪問医と情報共有を行い,抜歯可能であること, および術後の管理を鑑み抜歯日程の共有を行なった。 日本有病者歯科医療学会の訪問歯科診療の歯科医師のためのリスク評価実践ガイドの治療可否判断に基づき,下顎13歯を3回に分けて抜歯することとした。術後の服薬は経口摂取可能なため散剤をとしたが,不可の場合も考え座薬も準備した。1回目では,歯肉の腫脹が顕著な下顎左側467をフェリプレシン添加3%プロピトカインで浸潤麻酔し,抜歯を行い,縫合,止血を確認した。術前から術後のモニタリングでは,酸素飽和度、血圧共に問題はなかった。1か月後に下顎右側3-7,さらに1か月後に下顎右側2から下顎左側3番を抜歯した。いずれも問題なく処置を行い経過した。
意思の疎通が難しい嚥下機能障害がある患者であったが,術中の出血のコントロールのみならず術前術後の全身の状態を考慮しながら治療を行えた。今後も歯科訪問診療における抜歯では,リスク評価実践ガイドの治療可否判断に基づき処置を行い,超高齢患者に対する訪問歯科のリスク判定と体調急変時の対応を考えながら行う必要があると考える。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)